VIPOでは、2016年に高い満足度で好評を博した「映画プロデューサー養成セミナー 基礎編」。2017年も11月10日・17日・24日、12月1日の全4回(毎週金曜日)の日程で開催しました。講師は昨年に引き続き、映画監督であり早稲田大学名誉教授の安藤紘平氏、第4回ゲストは映画『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督。
受講者は、映画・TV・アニメなど映像コンテンツのプロデュース・企画の実務に関わる方が6割ほどいた中、プロモーションや著作権に関わる方、「プロデューサー」職に興味がある映像以外のコンテンツ業界の方の受講もありました。
全4回の講義では、映画の基本となる、企画の立て方・書き方、プロットの書き方、脚本の仕組みと構成理解、台詞の重要性、予算の立て方などをレクチャー。最終回では、『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督をゲストに迎え、同作品の企画~脚本作り、キャスティングなど製作過程の話を交えて講義を行いました。(2016年ゲストは『トイレのピエタ』松永大司監督。2016年セミナー開催報告はこちら。)
また最終日の講義終了後に開催された懇親会では、和気あいあいとした雰囲気の中、安藤先生・中野監督・受講者による活発な意見交換と交流が行われました。
終了後のアンケートでは、回答者の100%が「有益」で「自分の業務へ活用できる」という大変満足度の高いセミナーとなりました。
【プログラム&日程】
2017年11月10日、17日、24日、12月1日
毎週金曜日18:30~21:30(18:00受付開始)
●第1回:11月10日(金)「プロデューサーとは何か、企画の立て方・書き方」
プロデューサーの仕事、求められる資質と能力、また映画製作の流れと日本映画産業の現状・マーケットの構造についてレクチャー。企画の立て方のポイントとして、作品のクオリティから公開規模までの想定や、企画書・あらすじの書き方も説明。
●第2回:11月17日(金)「脚本の書き方・読み方、映画の始まり方、オープニングとエンディング、キャラクター」
映画脚本の基礎知識、脚本の基本構造やストーリーラインについてレクチャー。監督や脚本家と議論して映画製作を進めていくために、プロデューサーが脚本を読みこなす重要性や、実際の作品の脚本を紹介しながら脚本の書き方と構造を説明。
●第3回:11月24日(金)「脚本の分析とプロデューサーの意図 脚本のスケールと映画のスケール」
第2回に引き続き、脚本について、ストーリーラインとプロットポイントの作り方、魅力的な台詞についてレクチャー。また映画本編制作の予算について、邦画超メジャー作品や中規模作品をモデルケースに、予算項目をそれぞれの目安となる金額で説明。映画制作の裏側のリアルに迫った数字が提示されました。
●第4回:12月1日(金)「映画化までの準備と予算 映画『湯を沸かすほどの熱い愛』における実際」
前半は、安藤先生による第3回の続きから、映画本編制作のプリプロダクション・ポストプロダクションの流れ、進化するデジタルテクニックについて説明。また、ヒットする映画のタイトルのつけ方や、大中小3つのヒット規模による公開後の資金回収まで映画収支の読み方を説明しました。
後半は、『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督が登壇。安藤先生と対談形式で、作品の企画立ち上げから、プロデューサーとやり取りしながらの脚本作りやキャスティングなどについて説明。監督から見たプロデューサーの役割、またご自身の映画にかける情熱を熱く語りました。受講者からの質問にも懇切丁寧に答えました。
懇親会では、安藤先生、中野監督、受講者たちの映画について活発で熱いトークに花が咲き、また、安藤先生と監督からの素敵なプレゼントがあり、抽選会で大いに盛り上がる夜となりました。
・具体例を沢山提示してくださり、非常にわかりやすかったです!!
・プロデュース学の大枠の部分を知ることができ、モヤモヤしていたことなどが解消しました。
・実際的なお話が、今後、映画制作に携わるのに大変勉強になりました。
・映画というコンテンツと作り手の良い関係を感じさせてもらいました。
・まだまだ現場では下っ端ですが、いつか素晴らしい作品を世の中に出せたらいいなと改めて思えるセミナーでした!!
【受講対象者】将来の映画産業を担うプロデューサー / コンテンツ業界でプロデューサー志望の人
【参加費】(全4回) 一般40,000円(税込)/ VIPO会員20,000円(税込)
【受講者】28名
【会場】特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)ホールL/R 東京都中央区築地4-1-1 東劇ビル2階
1944年生まれ。1968年、早稲田大学理工学部卒業。同年TBS入社、事業局・メディア推進局局次長などを経て、2004年退職。2003年、早稲田大学客員教授を経て、2004年から早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授。日本映画監督協会国際委員。大学在学中から劇団天井桟敷に所属、映像作家として活動。1969年、電子映像を使った日本初のフィルム『オー・マイ・マザー』でオーバーハウゼン国際短編映画祭入選、同作品は米国ゲッティ美術館、横浜美術館などに収蔵。1994年、ハイビジョン撮影を35ミリフィルムに変換した『アインシュタインは黄昏の向こうからやってくる』で、ハワイ国際映画祭銀賞特別賞、国際エレクトロニックシネマフェスティバル・アストロラビウム賞を受賞。その他、作品、受賞歴多数。デジタル、ハイビジョンに先鞭をつけた映画作家として世界的に著名であり、2001年にはパリで安藤紘平回顧展が開催された。ほか『息子達』『フェルメールの囁き』がある。
1973年生まれ、京都育ち。大学卒業後「映画監督になる」と飲み屋のトイレにマジックで書き残し上京、日本映画学校に入学し3年間映画作りの面白さに浸る。卒業制作『バンザイ人生まっ赤っ赤。』で、日本映画学校今村昌平賞、TAMA NEW WAVEグランプリなどを受賞。2008年度の「ndjc:若手作家育成プロジェクト」に参加し『琥珀色のキラキラ』を制作。2012年、自主長編映画『チチを撮りに』(12)を制作、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて日本人初の監督賞を受賞し、ベルリン国際映画祭を皮切りに各国の映画祭に招待され、国内外で14の賞に輝く。2016年、『湯を沸かすほどの熱い愛』で新藤兼人賞金賞、日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞ほか数々の賞を受賞。独自の視点と感性で「家族」を描き続けている。
*ndjc(New Directions in Japanese Cinema):若手映画作家育成プロジェクトとは
VIPOが文化庁の委託を受けて2006年度よりスタートしたもので、優れた若手映画作家を対象に、本格的な映像制作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや、製作実地研修として35mmフィルムでの撮影を必須とした短編映画制作を実施すると同時に、作品発表の場を提供することで、次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指しています。中野量太監督は2008年度ndjcの参加者です。
公式サイト:http://www.vipo-ndjc.jp 公式twitter: https://twitter.com/ndjc_project