東海テレビ放送株式会社
先進コンテンツ技術による地域活性化促進事業 支援事例
東海テレビ放送株式会社360度VRアプリ「VR TOKAI」による観光ルート「昇龍道」情報発信事業
中部・北陸9県をまたぐ観光ルート「昇龍道」の魅力を360度VR映像で表現し、地域経済活性化およびインバウンド向上を目指す。
今回のコンテンツ制作について
特に気を遣っている点
VR制作においては170度のみで制作するのが主流になりつつあるが、今回は絶景ポイントを360度すべてで体感して欲しく、そのための導入の撮影に注力した。
人の顔が映る場合は4台のカメラを使い、顔が切れないように配慮した。風景を撮影する場合は6台のカメラを利用。撮影には、このように4台もしくは6台のカメラを同時に使用したため、RECされているか、ピントは大丈夫かなど気を遣った。
演出については、地上波の16:9の画面ではなくすべてが見えるという点が難しくもあり、カット割りでない方法でいかに見せたいところを見せるかということを考える必要があるが、それが魅力でもあると思う。具体的には出演者に指差ししてもらって誘導するような演出を行った。
また、一般人の映り込みについては、許可を得てぼかしではないようにした。スタッフについてはテロップを利用して隠すようなこともしている。
インサート映像が効果的でない場合があるので、インサート映像は使わなかった。
なるべく同一の明るさを意識した。そのため夕方は撮影できなかった。
最も苦労した点
360度という画角の面白さとコンテンツそのものの面白さの兼ね合い(VR映像においてどちらも大切な両者を兼ね備えることの難しさを感じた)。
撮影においては、通常のロケと違い人数が少ない、役割が多いというところが大変だった。
編集の技術を担当者に教えることについては、通常の編集ができる人間でも最初は難しく感じる模様。
GoProの撮影はステッチングが大変だった。また熱暴走でGoProが止まってしまうケースもあった。
新たな技術や技法
インタラクティブVR。VRの中で広告を見るとWEBブラウザが立ち上がるようになっている。
VR動画の目線ヒートマップ。ヒートマップの結果はAIで解析を行っている。AIで視点の流れを計測して、場面が変わるシーンでどのように変化するかを見ている。AIは、株式会社ジョリーグッドが開発したVR解析対応AIエンジン「VRCHEL」(ヴァーチェル)を採用。
コスト削減に効果的な独自の手法
ステッチングをする前にどこを使うか決めてから行った。
ユーザーターゲット・年齢制限
オールターゲットだが、コアターゲットはBOYS AND MEN(ボイメン)ファンのF2層。幼児はゴーグルNG。
映像酔いを防止する工夫
臨場感のある動きのある映像を撮影した際、mocha VRという編集ソフトを使用することで水平をとりやすくした。
没入感・リアリティ・臨場感を高めるための取り組み
パラセーリング、ジップラインなど、全身で体感するようなロケーションを選定することで、視聴者の臨場感を高めた。
カメラの位置は目線の高さ、もしくは少し高めから見下ろすように撮って、出演者がきれいに見えるようにした。また各カメラの映像の色を調整(自動調整)した。
地域振興のための注力点
放送と連動することで、VR視聴のリーチを高めた。また、東海地方出身・在住の男性で構成される人気のグループであるBOYS AND MENのメンバーが案内するかたちで撮影した。また、他地域の方たちが訪れたくなるような、この地方を代表する場所をロケ地にした。
旅番組と連動したVRアプリの制作により、より多くの視聴者にリーチできるようにした。VR未体験者もVR体験に誘うことができた。
配信先
東海テレビ 360度無料VRアプリ「VR TOKAI」説明サイト
http://tokai-tv.com/vrtokai/
実施事業者からのコメント
地上波番組の制作に携わってきましたが、360度VR映像の制作は、培ってきたノウハウをそのまま流用することができず、大変な難しさを感じました。大きな違いは、視点がユーザーに委ねられている点です。出演者の動きやヒートマップから解析することで、ある程度はコントロールできるようになりました。しかし完全ではないため、細かいカット編集などが適さなくなるなど、演出の足し引きが難しく感じました。
制作の難しさを感じる一方で、可能性のある非常に魅力的なコンテンツであることは間違いありません。ローカル局にとって全国放送にはさまざまなハードルがあるものですが、VRアプリを通じて全国、さらには世界へ発信できるわけですから、東海地方の魅力を発信し続けることは一つの使命とも思います。カメラや編集システムなど技術的な進歩も加速する今、制作力も上げ、今後もコンテンツ制作に尽力していきます。