VIPOでは、世界で活躍できる若手映画製作者を育成することを目的に「VIPO Film Lab」を2021年度より運営しています。その中の1コースである「脚本コース@ウディネ」*1では、ヨーロッパの団体EAVE(European Audiovisual Entrepreneurs)が主催するラボ「Ties That Bind(TTB)」*4、およびイタリア・ウディネにて開催される「ファーイースト映画祭」インダストリー部門(企画マーケット)「FOCUS ASIA」*5との共催事業として、EAVE所属の講師による脚本個別指導を実施しています。また今年度は、「FOCUS ASIA」企画マーケット「ALL GENRES PROJECT MARKET」*2、およびワーク・イン・プログレス部門「FAR EAST IN PROGRESS」*3への参加者も募集し、2023年4月26日から28日の3日間、イタリアにて「FOCUS ASIA」に参加しました。今回は同企画マーケットに同行した映像事業部・伊藤壮哉がインタビュアーを担当。〈前編〉〈後編〉に分けてお届けいたします。
*3 FOCUS ASIA「FAR EAST IN PROGRESS」(ワーク・イン・プログレス)に参加 映画祭でのプレミア上映や国際配給を目指すポストプロダクション段階(ワーク・イン・プログレス)にある長編映画を選出。選ばれたプロジェクトは、ヨーロッパとアジアとの国際セールスエージェント、映画祭プログラマー、バイヤーの前で最大10分上映する機会を得られる。
*4 Ties That Bind(TTB)
ヨーロッパとアジアによる国際共同製作を目指すワークショップ(ASIA /EUROPE CO-PRODUCTION WORKSHOP)。アジアと国際共同製作経験のあるヨーロッパ映画業界関係者等がメンターとなり、脚本開発、資金調達、マーケティング、国際共同製作の契約などを学ぶトレーニングプログラムを提供。プログラムは、春と秋の2回、ウディネ(イタリア)とシンガポールで開催され、グループワークや個別セッション形式で行われる。 https://eave.org/programmes/ties-that-bind-2023/
*5 FOCUS ASIA
「ファーイースト映画祭」期間中、3日間行われる業界関係者向けのイベントで、アジアとヨーロッパのプロデューサー、セールスエージェント、映画配給会社、テレビ放送局、VODプラットフォームがネットワーキングし、関係を発展させるためのプラットフォーム。 https://www.fareastfilm.com/focus-asia-2023/
伊藤 それではウディネについてお聞きします。今回3つのプログラム(①小山内:「VIPO Film Lab」 脚本コース@ウディネ、②鈴木:FOCUS ASIA「ALL GENRES PROJECT MARKET」〈企画マーケット〉、③後藤: FOCUS ASIA「FAR EAST IN PROGRESS」〈ワーク・イン・プログレス〉)に参加いただきました。それぞれの視点で、どのような目的と期待を持ち、実際にはどうだったのかお話いただけますか?
◆小山内照太郎さんの場合
(「VIPO Film Lab」 脚本コース@ウディネ:すでに企画・脚本を持つ国際共同製作等、国際的な活躍を志望する新進プロデューサーを選出。脚本をより国際的に通用する内容へとブラッシュアップを行うための脚本個別指導を行う。)
脚本コースでは、「TTB(Ties That Bind)」(以下、TTB)EAVEの脚本のコンサルタントをしているイギリスのクレア・ドーンズ(Clare Downs)さんに指導していただきました。正直なところ、スクリプトドクターというものにはずっと偏見があったのですが、プロデューサーで一緒に映画を作っている妻の大野から「クレアさんは本当に面白いから絶対に行った方がいい!」と推薦されていて、実際に本当に良かったです。
(「FAR EAST IN PROGRESS」〈ワーク・イン・プログレス:ポストプロダクション段階〉映画祭でのプレミア上映や国際配給を目指すポストプロダクション段階にある長編映画を選出。選ばれたプロジェクトは、ヨーロッパとアジアとの国際セールスエージェント、映画祭プログラマー、バイヤーの前で最大10分上映する機会を得られる。)
伊藤 後藤さんは、去年「VIPO Film Lab」脚本コースに参加されて、今回は「FAR EAST IN PROGRESS」(ワーク・イン・プログレス)ですね。いかがでしたか?
後藤 去年参加したときに、現地で複数人から「FAR EAST IN PROGRESS(ワーク・イン・プログレス:ポストプロダクション段階)はとても良いよ」と聞いており、「次回来るときは、ぜひFAR EAST IN PROGRESSに参加したい!」と思っていたので、今回参加させていただけてとても嬉しかったです。
「FAR EAST IN PROGRESS」で 後藤さんが説明している様子伊藤 実際のプログラムは、初日に上映があって、その後はラウンドテーブルだったと思いますが、そちらはどうでしたか?
後藤 今回は特に、ギャップファイナンシング(出資の大部分がすでに集まっていて、残りのギャップを埋めるためのファイナンサー等を探すこと)とフェスティバルプログラマーからどのようなリアクションが得られるかというのがゴールでした。ギャップファイナンシングは、同じ「FAR EAST IN PROGRESS」(ワーク・イン・プログレス)に参加していたフィリピンの会社から、「うちも参加できるかもしれない」という話になり、今もメールやオンラインでやり取りをしています。
後藤 「FAR EAST IN PROGRESS」(ワーク・イン・プログレス:ポストプロダクション段階)に持っていった作品は、フィリピン人キャストが2人くらい出演するので、フィリピンとの国際共同製作に…という流れになりました。ただ、ストーリー自体は日本だけで完結させようと思えばできるものだったんです。でもなぜそのフィリピンの方を出演させようと思ったかというと、「プチョン国際ファンタスティック映画祭」の「NAFF Fantastic Film School」(プロデューサー養成プログラム)に参加したときに、その女優さんと現地で会って、彼女の立ち振る舞いや持っているエネルギーがとても素敵で感化されたんです。
1978年、弘前市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。2003年に渡仏以後、プログラマー・コーディネーター・翻訳・通訳として、青山真治、黒沢清、北野武、山中貞雄、日活、相米慎二などのフランスでの特集上映に関わる。ナント三大陸映画祭の日本映画コンサルタント(2009年?2016年)を務めながら、井口奈己、富田克也、濱口竜介、深田晃司、真利子哲也、佐藤零郎などの新世代のインディペンデント映画作家をフランスで初めて紹介する。2014年のカンヌ国際映画祭では、それらの映画作家とプロデューサーが参加した国際共同製作ワークショップGateway for Directors Japanを主催。以降、フランス・ヨーロッパとの国際共同製作を前提とした映画製作を開始し、富田克也監督『バンコクナイツ』(2016)、『典座ーTENZOー』(2019)をそれぞれロカルノ映画祭とカンヌ国際映画祭批評家週間で発表。2021年にフランスの映画製作・配給会社Survivance(シュルヴィヴァンス)に参加。最新作『やまぶき』(山﨑樹一郎監督)は、日本映画史上初めてカンヌ国際映画際ACID部門に招待され、4カ国の国際映画祭で受賞。第4回大島渚賞受賞。また、ライフワークとして、フランスの制度をモデルにしながら、日本の地方での映画鑑賞教育の普及を行なっている。字幕翻訳は150作品以上を担当。2020年、フランス最大のドキュメンタリー映画祭Cinema du Reelの長編コンペティション部門に審査員として招待された。
Survivance公式サイト https://www.survivance.net/ja