「内閣府 事務方トップが語る、新しい“クールジャパン”を導く知的財産戦略ビジョン」
- 「知的財産戦略ビジョン」では、時代背景を踏まえ、日本が本来目指すべきクールジャパンに向けて、これから取り組むべき課題や未来への方向性を示しています。そのビジョンとともに、コンテンツ業界における人材育成、資源、新技術、対外的な対策、デジタルアーカイブなどの施策の方向性を、内閣府・知的財産戦略推進事務局 住田事務局長にお話ししていただきました。
- 内閣府 知的財産戦略推進事務局長 住田孝之氏[略歴]
(以下、敬称略)
新しい価値を日本が先導していく
知的財産戦略ビジョン
- ◆「価値デザイン社会」をつくる
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VIPO専務理事 事務局長 市井三衛(以下、市井) 「知的財産推進計画」については、昨年初めてインタビューをさせていただき、 「知的財産推進計画」の成り立ちから始まり、コンテンツ業界に関わる項目を掘り下げてお聞きしました。今年は昨年から引き続いている取り組みも含めて、「知的財産推進計画2018」から主に6つの課題についてお伺いしたいと思っています。
内閣府 知的財産戦略推進事務局長 住田孝之氏(以下、住田) ご質問にお答えする前に、「知的財産戦略ビジョン」についてご説明をしましょう。(「知的財産戦略ビジョン~(サマリー)」参照)
私たちが今きちんと捉えなくてはならないのは、実はイノベーションは大きく変質をしているということです。
従来は新しいものを作れば売れましたが、今や需要サイドがリードするイノベーションの時代です。その変化についていけないと、良いイノベーションをリードできません。
「知的財産戦略ビジョン」は、今ある環境変化や兆候をとらえた上で、将来どのような社会になり、何が価値になるのかを意識して、社会全体を一生懸命考える必要があり、策定したものです。
そこで目指したいのは「価値デザイン社会」です。ガラパゴスではなくて、世界に共感を生むような新しい価値をデザインして、世界的に生まれる新しい価値を日本が先導的に定義していく社会になるという発想です。
その時に必要なものが3つあります。
1. 「脱・平均とチャレンジ」
「個々の多様性」。平均にとどまらず、みんながいろいろなことにチャレンジすることで新しい何かが生まれ、世界からも集まってきます。才能・異能を持った方が集まりアイデアがわく「スカンクワーク状態*」が大切です。
*「スカンクワーク状態」とは・・・「スカンクワーク」とは本来、米国の防衛・航空機メーカーにおける秘密開発部門の通称であったが、それが転じて革新的な製品・技術を開発するために既存の研究組織とは別に設置される(秘密の)独立型研究開発チームや、さらに転じて、技術者個人や少数チームが会社に報告せずに行っている研究開発活動をいう場合もある。
2. 「分散と融合」
分散している能力やアイデアをどこかで組み合わせる・融合していく仕掛けや場(プラットフォーム)が必要になってきます。そこから新しい価値がどんどん生まれてくるのではないかと思います。
3. 「共感・貢献経済」
新しい価値は、世界から共感を得る必要があります。クールジャパンが良い例ですが、日本全体をブランディングしていくことは非常に大切なことです。そのためには「日本のものだから良い」ではなく、各国・地域別に日本に共感できる部分を積み重ねて、それをマーケティングの材料としながら発信をします。さらに世界の人々を呼び込めば、さらなる融合が国内で起こると思います。そうすると、クールジャパンの新しいコンテンツが次々と生まれると思います。
そこでは最初から「知財・権利」とは言わずに、むしろ「コモンズ」のような形がいいと思います。自由に見ることができるようにして、実際にビジネスをしていく場合に、権利を発生させればいいと思います。少なくとも、アイデアを組み合わせるところまでは自由にできるといいですね。
さらに、日本らしい価値や特徴を生かした仕組みが必要です。クールジャパンは”歴史”でもあり、表面だけマネしてもできないことです。日本人は意外と日本の歴史を知らないですから、きちんと勉強すれば、もっとたくさん発見できると思います。形だけでは負けそうになっても、もっともっと深くいけると思います。
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◆今求められるメンタリティ
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市井 私たちは8月に北京と上海に行って、今、中国が大きく変わっていることを実感しました。国が仕組みを作り、国民はそれに従うので、変化するスピードが速いのです。AI技術や車の自動運転の開発もすごい勢いで進んでいます。失敗してもいいという柔軟さがある中国と、私たちが戦っていくのは大変だと思いました。
住田 「多少は失敗してもいい」という発想が大事です。今はすぐ「税金の無駄遣い」、企業も「今は失敗できない」と言われます。「8割できていれば良くて、失敗した2割を改善していく」というメンタリティを政府としても作っていきたいですね。
それには思い切った「手入れが行き届いたインモラル**」が必要です。日本人は制度から、企業は「これはやっていいのか悪いのか」から、考えがちです。そうではなく、やってしまえばいいのです。それで怒られたら、制度を考えればいいのです。
**「手入れが行き届いたインモラル」とは、「知的財産戦略ビジョン」において提示された、過度なコンプライアンスで自らの行動をがんじがらめにしない、限定的・画一的なドグマに陥らず他方で適切なバランスを取るといった今後求められるだろう方向性。
市井 中国は、とりあえずやってしまいますね。ひずみも出ますが、グローバルでは、そのほうが有利ですね。
[1]クールジャパン人材の育成・集積
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◆クールジャパンをさらに生み出すような仕組み
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市井 人材育成の集積の部分で、クールジャパン人材育成検討会がありますね。クールジャパン人材の今後の活かし方について、どのようにお考えですか。[参照元:「知的財産推進計画2018」 p.13 (5)クールジャパン人材の育成・集積]
住田 クールジャパン人材のような「インフルエンサー」は大切なところなので、引き続き取り組んでいきます。
クールジャパンアンバサダーをたくさん任命していて、外国の方も徐々に増えています。ここも活用していきたいと思っています。
それと、どこの国の方が、何に関心を持っているのかを考えていきます。さらに言うと、日本にもどんどん住んでいただいてクールジャパンコンテンツのインフルエンサーとして活躍していただくだけではなく、その方自身がクールジャパンをさらに生み出すようなことまでやっていただきたいと考えています。
また、外国人材については、外国人労働者というアプローチだけではなくて、外国人生活者・外国人需要家として、どんどん来てもらえばいいと思います。来日したことがある方や日本企業で働いたことがある、または日本企業の海外拠点で日本に共感を持ってくれるような方を、電子登録しておくといいと思います。そういう方に日本のコンテンツを発信して反応をうかがいながら、本当に日本のことを好きな方には長期滞在や永住などの特典を与えていく仕掛けも法務省と議論し始めています。エストニアの「e-Residency」制度を参考にするといいと思います。
市井 私たちも今、検討しています。コンテンツ業界の中には、日本のコンテンツ企業に外国人の方がいないからグローバル化しきれていないのではないかと言う方もいます。
日本に来たい方や働きたい方はもっといるという話になると、ほとんどの企業に外人枠があるわけではなく、通常の面接にたまたまきた外国人を採用しているのです。その場合、日本語も話せますから日本人にかなり近い方たちだと思います。
外国人採用枠を設けている企業も何社かでてきていますが、採用後の待遇や対応も、短期間でやめてしまう場合の対応も必要だと思います。増やすにはどうしたらいいか個社ではできないことを、私たちがサポートできないか、その方法を模索しています。
住田 法務省もクールジャパン戦略に貢献できる外国人材の受入れには積極的に検討してもらっています。人材育成検討会のとりまとめもベースにしながら検討していきたいと言っています。
[2]地方のクールジャパン資源の発掘・創出・展開
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◆当たり前ではない地方の資源
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市井 地方のクールジャパン支援ではインフルエンサーを増やす必要がありますよね。私たちもジャパンアンバサダーでインフルエンサーやアンバサダーの登録を引き続き増やしていきたいと思っています。[参照元:「知的財産推進計画2018」p.14 (6)地方のクールジャパン資源の発掘・創出・展開]
住田 私たちも大切なことだと思っています。「地方版クールジャパン推進会議」も行っています。
地方の方々は、自分たちのことを自分たちの目線で見てしまいます。「それをPRすればいいのに」と言っても、「こんな当たり前のこと」と自分の特長が分かっていない。かつ、その地域の特長がいろいろなことと結びついていることも分かっていません。
例えば、新潟の方はおいしいお米やお酒、錦鯉や小千谷縮が名産品であることを、当たり前だと思っています。しかし、この当たり前に共通している特徴は、「水」なんです。きれいな雪解け水があるからおいしいお米が育ち、お酒もおいしい。錦鯉の模様はあの水が影響しているらしいです。小千谷縮もその「水」にさらすことで白がすごく美しくなる。ところが、みんなそれぞれでは知っていますが、誰も結び付けたりしないんです。
そのような地方に眠っている資源はもっとあると思います。そこを何とかしていきたいです。
プロデュースする人材は地元の方では難しいと思います。よそ者か出戻りの方でないと、そこの特長がわからないと思います。
市井 地域の方たちはうまく融合しますか?
住田 します。一番いいのは、Iターン、Uターンのように、一度東京など大都市に出てきて、ある程度の年齢で帰ってきた方たちです。
吉本興業がやっている「住みます芸人」の方たちはすごいですね。笑いを取らないと帰ってこれないという前提なんです。笑いを取るって、その土地の価値観の把握が必要なので、あの芸人さんたちはその土地の特性をよくわかっています。よそ者だから、客観的に見ることができますし。
市井 帰ってこない人もいますね。そのくらい腹をくくらないとダメだということですね。
[3]コンテンツの持続的なクリエイション・エコシステムの確立
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◆「知財」と「技術」をうまく組み合わせる
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市井 コンテンツの持続的なクリエイション・エコシステムの確立、特に、ブロックチェーン等の技術の活用についてお願いします。[参照元:「知的財産推進計画2018」p.17 (3)コンテンツの持続的なクリエイション・エコシステムの確立
住田 コンテンツの世界もいろいろな方の知や才能を融合していく必要があります。多くの方のアイデアを自由に利用できる新しいプラットフォームを作り、クリエイターだけではなく、共作者や出資者がどんな作品にどのように関わっているのかという情報を一元管理できるシステムがいいと思います。そして、作品が売れたときや海外展開したときに、それらの情報が管理できるブロックチェーン等のデジタル技術を使えば相当やりやすいと思います。
さらに海外で二次創作をした場合には、もともとの権利者、制作者、関連した方にしっかりと対価が還元されているというメカニズムを作りたいと思っています。
このように知財の世界とクリエイションの世界を融合させて、かつブロックチェーンのような技術でそれを管理していくというようなことも可能だと思います。そして、海賊版対策にもこのシステムは有効だと思います。
市井 そのような仕掛けをぜひ考えていきたいですね。
住田 いきなりでなく、ベンチャーの方がこの手の仕組みを作り始め、仲間内からやり始めてくれてもいいのです。途中のやり取りを管理する仕掛けがあればいいだけです。デジタルデータにしておけば、アクセス記録を管理するのはそれほど大変なことではありません。
市井 ブロックチェーンと呼ぶかどうかは別として、できそうなことですね。
住田 小さく生んで大きく育てることが必要です。日本人の悪い癖で、最初から100点を求めがちですが、はじめは30点でもいいのです。少しずつ始めて洗練してきたら、より多くの人が参加するというスケールになればいいと思います。
これは経産省で実証実験を始めるということになっています。実は昨年から調査を始めていまして、今年度、2年目の調査をどのようにすべきか検討しているところです。
VIPO事務局次長の槙田寿文(以下、槙田) コンテンツ業界では、海をまたぐと真似をされてしまう懸念があって、企画を見せられないという人もいます。
そこにブロックチェーンを使えないかという話もありましたが、コンテンツ業界では「そんな簡単にいかない」と懐疑的に思っている方もいます。ですから、小さく実験をしていただいて、ワークすることを実証できればいいと思います。
住田 例えば、みんながずっと中国のことを「泥棒」と思っていたわけですが、今度は泥棒される側になるかもしれないと思っています。中国の中にも泥棒される人と泥棒する人が混在しています。かつ、泥棒される人の方が、だんだん力を持ってきているので、中国の制度は大きく変わっていくと思います。今から中国ときちんと連携する体制を整えておくことが重要だと思います。
コンテンツ業界は今がチャンスです。中国と協力しながら政府間でやるにも良い状況です。中国は、知財分野で日本と協力することに関してわりと前向きです。
[4]クールジャパン戦略の持続的強化
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◆日本の魅力を横につなぐ
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市井 クールジャパン戦略の持続的強化について、どのようにしていくべきだと思いますか? [参照元:「知的財産推進計画2018」p.27 (5)クールジャパン戦略の持続的強化]
住田 持続的に強化していくためには、外国人目線を持つことが一番重要です。外国人が何をクールだと思うのかをよくマーケティングして、それを広げていくことがクールジャパン戦略です。
もうひとつ非常に重要なのは、「いいね」と思ってくれたコトの価値をどうやって上げていくかです。日本人は職人のように「背中をみせる」ことで伝えて、言葉にしないことが多いです。さらには何が本当にいいものなのかを分かっていないところがあります。ここを直していかないといけません。言葉にして、ストーリー化をして付加価値を高めて、それがどれだけ希少なことなのかをわからせれば、急激にクールジャパンの価値が高まります。
どこの国の方が何に興味を持っているのかを認識することも必要ですし、その部分に関するより深い話をストーリー化して、価値を高めて横でつなげていくことが大切です。
クールジャパンのポイントは、入り口になるものがたくさんあることです。ファッションやモノ、食や生活文化、そしてコンテンツ。ゲーム、アニメなど、たくさんあります。そして、そこから入ってきた方の興味は、そこだけにはとどまりません。日本に来たら、歴史や神社仏閣、禅、武士道など、横に展開していくのです。
今はディスカバージャパンと言っていますが、日本に来た方々に新しい日本の深みを体感してもらうことで、より日本への理解を広めて、たくさんの付加価値を落としていってもらうのです。物質と精神的なもの、時代的なもので軸を作っている中で、体験したそれぞれに関してはもちろんですが、横のストーリーがある場合もあるのです。
そのつながりをまとめたものが、「日本語り抄(日本の物語編集のためのガイド)」です。これは編集工学研究所に作ってもらったのですが、いろいろなものが横でも繋がるようなことをまとめてあります。
例えば、ずっと昔からの「kabukuカブク」文化の最古は縄文の火の文化といわれていて、それが十二単などきらびやかなものになって、それが歌舞伎となって、現代になると、きゃりーぱみゅぱみゅや草間彌生などになるという。いろいろな要素が実はkabukuという一つの要素からできているということです。そういう横で繋がっていくストーリーを語り始めると海外の方はものすごく興味を持ってくれます。
それは、これだけ長い歴史が残っている日本だからこそです。ほかの国は、前の文明を滅ぼしてからでないと次の文明になりません。歴史が脈々と繋がっている日本、ここはほかの国には真似できない部分です。
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◆取り入れて編集する力と出て行くマインドセット
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住田 こういう部分をきちんと認識しながら戦略を立てて進めていくのが、クールジャパンの戦略の持続的強化です。
そして、クールジャパンの要素を再生産していくことの中で一番大切なのは、日本の一番の強みだと言われている「編集力」です。異質なものが外から入ってきたときに、それを自分なりに編集・加工して、新しいものを作り上げていく。海外の部分をどんどん取り入れて、その方たちの知恵も使いながら、クールジャパンの新しい要素を作っていくことをやっていきたいと思っています。
市井 そういう意味では、日本のコンテンツだけでなくて、共同製作を含めてサポートしていくべきでしょうね。
住田 インド版『巨人の星』でもいいのです。相手の国に通用する日本の文化的要素を意識しながら作り変えていくことがすごく大切です。
トルコは日本のドラマ『mother』をリメイクして世界中に広げました。イスラムのネットワークももちろんありますが、それを得意としている国とうまく連携して、海外のノウハウも使いながら、日本のものをアレンジすることを一緒にやっていく方法もあると思います。
槙田 出ていくマインドを、どうやったら変えていけるのかが永遠の問いに感じています。「発見される日本」はあると思うのですが、「編集して出していく」部分のマインドセットがまだまだ……特にコンテンツ業界に関しては足りないと思っています。
住田 一つのトリガーになり得るのは、国内事業だけではやっていけない”地方”ですよね。外にどれだけ売れてどれだけ人気になるかで変わってくるので、自分のコンテンツをどう売るか、どう知ってもらうかに、もう少し必死になってもらうと、外に出ていくマインドが出てくると思います。
市井 私たちも昨年度のコンテンツグローバル需要創出基盤整備事業(J-LOP4)のときは、地域経済活性化に資する事業について対象としていました。地方のテレビ局がキャラクターを使って、地方自治体のプロモーション映像を旅行博で流す案件も対象としていました。しかしそれさえも実行が難しい。専任者もいないし、半額の助成金では残り半分は出さないといけないことがネガティブ要素になっていました。J-LOP4で地域経済活性化をずっと続けて、やっと体制ができましたが、今年度のクリエイターを中心としたグローバルコンテンツエコシステム創出事業費補助金ではそこが助成対象にならなかったので、再度その体制をつくるのは大変なことだと思っています。
先ほどのお話のように、IターンやUターンの方が増えれば地方の価値も上がりいいのですが、まだまだそれは難しいですよね。
住田 心配しているのは、自治体の経営が国からの予算で充分できてしまうことです。悪い言い方をすれば、経営にもっと困ればやらざるを得なくなるのですが、現実では困ったときにもう手遅れという状況があり得ると思います。
[5]ロケ撮影の環境改善
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◆ロケ地として日本を選んでもらうためには
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槙田 ロケ誘致の観点で言うと3つの問題があります。(1)きちんとロケができるかどうかという問題、次に(2)インセンティブの問題、最後に(3)ロケの依頼がきたとして、きちんと対応できる能力が日本のプロダクションにあるのかどうかという、業界全体の受け入れ体制の問題です。[参照元:「知的財産推進計画2018」p.27 (5)ロケ撮影の環境改善]
一番大切なのは、日本でロケをしたい人に「できない」と思わせないことです。そこは、政府にリードしていただきたいと思っています。海外では地方政府が力を入れているところもあるので、もう少しインセンティブが働くような仕組みができないのかと思います。
住田 ロケをすることによって経済効果は必ずあります。そこの呼び水になるようなことを国レベルでも何かできないかということは、来年度の要求の中で考えることになっています。政府だけの予算でやるのか、それとももう少し違う形でのお金の集め方を考えるのか。もう少し皆さんと議論ができれば良いですね。そのお金だけでやるのではなく、そのお金を種銭にしてもう少し大きくしてやれると全然違うと思います。
[6]デジタルアーカイブ社会の実現に
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◆海外から発見されやすくする
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槙田 デジタルアーカイブに関して私たちは、「JACC®」というデータベースを運営しています。「JACC®」は、民間として唯一、「ジャパンサーチ」(平成31年から試験公開版を一般公開予定)に参加しており、文化庁の「メディア芸術データベース」とともにメディア芸術分野の”つなぎ役”としての役割を担っています。
委託を受けまして、現在、海外のデジタルアーカイブについて調査していますが、国が支援していく仕組みとしてとても大切だと思います。「知的財産計画2018」にも書いてあるような、”つなぎ役”の役割の明確化と支援方法の検討について、どのような状況なのかを教えていただきたいです。
[参照元:「知的財産推進計画2018」p.27 (7)デジタルアーカイブ社会の実現]
住田 一番私たちが注目しているのが、「ジャパンサーチ」の試験公開版の一般公開が始まることです。一般公開されると多くのユーザーが使うので、いろいろな意見が出てくると思います。「ジャパンサーチ」は意見を踏まえた開発を予定しています。それを繰り返しながらだんだん良くしていくことが一番大切です。
“つなぎ役”については、「JACC®」はもともと経産省がつくったものなので、デジタルアーカイブを有効活用してくひとつのあり方として、横断的なところでメタデータの粒度をそろえて、日本国内だけでなく対外的にも発見されやすくしていきたいと考えています。そして、試験版のブラッシュアップとともに、つないでいく先のデータベースをどんどんと広げていくところに力を入れていきます。キュレーションページに案内したり、活用事例の紹介したりすることなどを考えています。
そもそもデータが揃っていない分野がたくさんあると思うので、きちんとできているところから世の中に発信して、載っているといいことがあるという道筋を作っていきたいです。
槙田 ”つなぎ役”としては、繋がっているデータベースのみなさんには、常にメンテナンスをしていただきたいと思っています。
「JACC®」のデータはすでに2万4000くらい英語化されていますが、多言語化の点では相当遅れていると思います。”つなぎ役”がある程度汗を書いて、繋がっている人たちを引っ張っていかないと、海外からの需要にも応えられる「ジャパンサーチ」にはなっていかないのではないかと思います。”つなぎ役”としての役割を明確にして、前に進めるような状況を作っていただけるといいと思います。
EU、アメリカ、中国、韓国のデジタルアーカイブに関する調査の経過報告によると、日本は中国、韓国をリードしていると思います。デジタルアーカイブを”横断的”にスタートしていることについては、世界的に見て日本にアドバンテージがあると思うので、リードを守っていったほうがいいと思います。
住田 そうですね。しっかりと取り組んでいきたいと思います。
※登録商標”JACC”は,当機構が株式会社ITSCから許諾を得て使用しています。
- 住田孝之 Takayuki SUMITA
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内閣府 知的財産戦略推進事務局長
- 1985年 通商産業省入省
- 1989年 機械情報産業局情報処理振興課 課長補佐
(1991~93年 米国留学)
- 1993年 環境庁長官官房総務課 課長補佐
- 1996年 産業政策局企業行動課 課長補佐
- 1999年 資源エネルギー庁総務課 法令審査委員
- 2001年 経済産業省 企画官(国際経済担当)
- 2002年 経済産業省 企画官(経済連携担当)
- 2004年 経済産業政策局 知的財産政策室長
- 2006年 経済産業省産業技術環境局技術振興課 課長
- 2007年 経済産業省商務情報政策局情報通信機器課 課長
- 2009年7月 日本機械輸出組合 ブラッセル事務所長
- 2013年6月 資源エネルギー庁 資源・燃料部長
- 2015年7月 経済産業省 商務流通保安審議官
- 2017年7月 内閣府 知的財産戦略推進事務局長