国内最大のコンテンツ見本市「Japan Content Showcase 2016」イベント主催者対談
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世界からも注目されている日本最大のコンテンツマーケットJCS(Japan Content Showcase)が今年も10月24日~27日に開催。TIFFCOM(東京国際映画祭併設の映像マーケット)、TIMM(東京国際ミュージックマーケット)、TIAF(東京国際アニメ祭)の3つのコンテンツマーケットを同時に開催する理由や注目のセミナーをイベント主催者の3名に、VIPO事務局長・市井がインタビューしました。
- 髙木 文郎氏(JCS事務局統括/TIFFCOM主催責任者/公益財団法人ユニジャパン 事務局次長)[略歴]
- 桑原 誠氏(TIMM主催責任者/一般財団法人音楽産業・文化振興財団 専務理事)[略歴]
- 松本 悟氏(TIAF主催責任者/一般社団法人日本動画協会 専務理事・事務局長)[略歴]
(以下、敬称略)
注目の国際コンテンツ見本市を国内外のビジネスチャンスに!
アジアマーケットにおける位置づけは?
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◆今年も3イベント同時開催。多方面からワンストップでアプローチ
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高木)JCSは昨年、過去最高の延べ来場者数を記録しました。とくに外国からの来場者が年々増えています。出展ブース数も、今年は前年を上回る数になっていて、アジアのマーケットとしては、春の香港フィルマート、秋のJCSと称していただけるほどアジアにおける特徴的なマーケットに成長できているのではないかと思っています。世界から見て、東京という今非常に注目度の高い場所で開催され、ここに来れば’クールジャパン’を体感することができるということで、全世界的に訴求力のあるマーケットになっていると思います。
TIFFCOMとしては、今年は東京国際映画祭と開催日が重なる日程を組みました。これにより映画プロデューサーをはじめとするさまざまな映像関係の方が両方のイベントを行き来できますので、より相乗効果を得られるチャンスだと思っています。
桑原)TIMMは、台湾の「ゴールデン・メロディー・フェスティバル」、韓国の「ミューコン」をはじめ、様々な海外マーケットとも毎年連携しています。今年は、この2マーケットとアーティストを交換し、連携ライブに1バンドずつ出てもらう予定です。イベントの主催者だけでなくアーティスト同士も含めてお互い交流を図れる要素を増やし、日本側も経験値を増やしていけたらと思っています。
松本)今まで海外へ行くしかなかったのが、TIAFを開催することで、BtoBイベントにおける日本での立ち位置も定着してきました。アニメは海外の制作者からみると、原作が日本に多くある点がかなり魅力的だと思います。しかもアニメーション×アジアの親和性はとても良いです。アジア圏に浸透しているので、地元での視聴者がバイヤーとして来てくれています。これは’クールジャパン’として、かなりの戦力だと思います。
今年の出展企業や内容のトレンド・注目ポイントは?
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◆今まで以上に間口が広がった2会場。インバウンドの施策も。
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高木)JCSとして今年の大きな特徴は、昨年と比べ、日程と場所のどちらも拡大されていることです。今年は、TIMMの会場を渋谷に移して拠点を拡大することにより、台場会場のスペースをより広く使えるようになり、商談スペースを広げることができました。
今までの出展者に加え、直接的にコンテンツをセールスするわけではないもののコンテンツを利用して地方の地域振興活性化などを目指している地域団体や企業、VRなど新しい技術のコンテンツ活用を推進している企業、コンテンツをプロデュースするタレントエージェンシーなど去年にはなかった出展者が増えているのが今年の特徴です。アジアの放送局などと組んでコンテンツを制作し、インバウンドの地域振興への結び付けを意図して参加される企業も増えています。実際ここ1~2年、出展された地方局の方々からはTIFFCOMに参加することでアジア各国のさまざまな映像関係者と繋がることができ、具体的なビジネスに結実するケースも増え、手ごたえを実感しているという声も多数いただいています。
桑原)TIMMでは、レコード会社をはじめ、マネージメント会社や音楽出版社など、海外に自分のアーティストを売り込むという目線でいろいろな会社の方が出展してくれるようになりました。
また、今年はメイン会場を渋谷に移したことで、海外から来たバイヤーに、アーティストの普段通りのライブを見てもらえるよう、ライブ環境が向上しました。今年は、渋谷TSUTAYA O-EASTで3日間のショーケースライブとなりますが、将来的には複数のライブ会場を使って開催していければと思っています。
市井)そう思うと、別々になったのではなくて、広がったという解釈になりますね。
松本)最近のアニメーションは地域と連携していることが多いです。イベント効果もだんだん高まり、PRにもなってきているので、東京・大阪以外の地方でもビジネスのチャンスが広がってきました。海外から見ると、アニメの人気が定着してきているので、バイヤーの来日が増え、それに伴う出展も増えています。
高木)コンテンツを利用して地域活性化やインバウンドにつなげるなど、今はさまざまな業態でコンテンツ活用の成熟度が増してきている過程にあります。最初は官庁や自治体主導のコンソーシアム形式だったものが、いろいろな業態の民間企業同士でタッグを組むことで実はビジネチャンスが広がることも分かってきて、そうであれば直接異業種間で関係を作っていきたいと考える企業も増えているように思います。これからのJCSは、コンテンツを軸にいろいろなプレーヤーの方が参加して新たなコミュニケーション作りの機会を提供するリアルなプラットフォームとなり得る、そんな可能性を感じています。
市井)JCSといったイベント出展費をサポートするJLOP補助金も4年目に入りました。コンテンツ事業者とそれ以外の業態の事業者が連携した事業が増えているように感じています。
高木)どういうコンソーシアムを作ったら、それぞれのビジネスの価値を高めていけるかがテーマになってきていますね。海外も含め、異業種間でどう理想的な座組みを作るかが重要であるなら、ぜひともJCSという場を新しい関係を作る入口の場として活用していただければと思います。
市井)JLOP事務局を運営するVIPOとしても積極的にサポートしたい部分です。
同時開催のメリットは?
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◆ワンストップでコンテンツ業界をつなぐJCS
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高木)TIFFCOMでいうと、JCSに足を運ぶことで映像以外にもさまざまなコンテンツに触れることができますので、海外からより多くのお客様が足を運んでくださるようになり、マーケット自体の勢いを実感してもらえるようになったのではないかと思います。去年も、海外の映像系のバイヤーをTIMM 主催の音楽ライブにご招待するなどJCSを通じていろいろな日本のコンテンツに触れる機会を提供でき、のちのアンケート調査でも高い満足度を感じてくれているようです。海外の他のマーケットとの差別化、価値の創造、メリットの提供は出来ているんじゃないかと思っています。
市井)JCSのようにいろいろなジャンルが混合している見本市は海外にも多いのでしょうか?
桑原)多いですね。むしろそっちが主流になり始めているのではないでしょうか。例えば、「SXSW(サウスバイサウスウエスト)」のように、音楽、ムービー、IT、エディケ―ションなど多ジャンルを扱い、オースティンの街全体で行っているイベントもあります。
松本)BtoBイベントであっても、エンターテインメント性を持たすべきだと思います。会場も台場だけじゃなく、新宿や渋谷など街を会場にする考え方で、出展するということをしても良いと思います。BtoCイベントも一部あるので、街の中でイベントをするという雰囲気作りをすることで、一般の人もこのイベントに注目するようになると思います。
桑原)TIMMでは映像関係のバイヤーも日本の新しい楽曲を常に探しているので、長期的な視点で見るといろいろな実績が出てきていますね。
市井)いろいろなジャンルに触れることによって、プラスになることがあるんですね。
桑原)特に最近のアーティストは映像的な要素も重要視しているケースも多いので、音楽だけではない、他ジャンルのバイヤーが来てくれるということは、いろんな意味で繋がっていく可能性が広がっていくと思います。
松本)アニメ、コミックス、映画などいろいろなメディアで共同制作が増えているので、いろいろなジャンルと触れ合うことはとても有益です。
高木)海外のプロデューサーにとっても、JCSは日本のポップカルチャーを俯瞰して見ることができる場所だと思います。特にアニソンをフューチャーした音楽シーンなどは、カルチャーとしての情報を得たい人が多いと思うので、音楽、アニメ、映像という3つのジャンルを扱ったJCSは、そういう海外の人たちに恰好の情報を提供できているのではないでしょうか。
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◆5年・10年後を見据えた将来像を教えてください
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高木)一番理想なのはBtoBとBtoCが一体となって、東京という街全体で日本のポップカルチャーが盛り上がっているイベントに仕立て、それを海外から訪れた人が体感して、世界中にその熱を持ち帰ってもらう、発信してもらうことだと思います。その熱が伝播していけば、年を追うごとに海外からも日本のポップカルチャーファンが多く東京に詰めかけ、ビジネスのキーパーソンも世界中から東京に集まる好循環を作りだしていけます。そうすれば、出会いもたくさん生まれ、JCSが新たなビジネススキームやトレンドを作っていけるようになれると思います。
松本)アニメの場合はキャラクターがあり、日本に来る若い観光客の1割から2割はコンテンツに触れたいと、目指してくると言われています。そういう方が来た時に、日本は常設の鑑賞できるところが少ないです。聖地化されている地方や、ライブやイベントを目指して来るような流れにしたいですね。
桑原)4~5年後のビジョンとして、BtoBだけでなく、渋谷におけるインバウンドのきっかけにもなり得るイベントを目指していきたいです。
市井)地方や場所ぐるみで取組む、そして、常設展示をしていく。この2つをやっていくことが大切だと思います。特に、イベントのようにある時期だけでなく、常に最新のものを見れ、そこから広げることができる常設型は面白いと思います。
松本)海外では、ラスベガスなどリゾート地でイベントをやっていることも多いですよね。観光客など人が来やすい場所で、しかも閑散期という戦略で行っているところもあるので、日本ももっとオープンにいろいろな視野で考えて良いと思います。
市井)そうですね。そういうことに挑戦していく時期が来たのかもしれませんね。
今年トレンド・注目のセミナー
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◆今年はワンデイパスでさらに参加しやすく
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高木)セミナーは去年、大変好評をいただきました。今年も皆様にお役立ていただけるように、さまざまな企画をご用意しましたが、中でも注目していただきたいのはVRをテーマにしたセミナーです。JCSの最大の強みは音楽、映像、アニメの3つのジャンルが横断されていることですが、「緊急課題!?コンテンツビジネスとVRの近未来像」と題したセミナーを3つのマーケットの共同企画で立案しました。
音楽、映像、アニメそれぞれの分野でVRは新たなビジネスの鉱脈になりうるのか?今から参入しても間に合うのか?またその場合の課題は何か?などをビジネス的視点で考えていくセミナーです。日本のコンテンツ業界がVRを武器にどう世界的なマーケットに出ていけるのかということについてもヒントになるようなセミナーにしたいです。海外からみたら、日本がVRを使って海外にどうアプローチをしていくかを知る機会にもなりますね。
桑原)「VR元年」と言われているので、技術的な方向に偏らず、エンターテイメントの立場から、活用の仕方をそれぞれのマーケットから多角的に理解を深める事ができるセミナーにしたいです。
市井)技術の人と、それを利用する人達との間の橋渡しを考えることが大切ですね。
松本)アニメは違法の配信が問題になっているので、配信する運営者の考え方をセミナーで伝えていきたいです。配信の事業者の考え方を啓蒙したり、日本のアニメを海外に配信するやり方のアドバイスなどもセミナーで伝えたいです。
違法サイトが多い国でも、今は違法サイトを淘汰していく動きがあるので、これは相乗効果にもなっていくと思います。一般のユーザーもモラルをもって正しい配信元からきちんと見ようという啓蒙になっていけばいいと思います。
高木)JCSでは去年、動画配信セミナーをやりました。昨年は日本の動画配信元年とも言われ、いろいろなビジネススタートのタイミングでしたので入口的な情報をお伝えしました。今年も動画配信は重要なテーマです。日本動画協会さんが主催されて、昨年よりさらに踏み込んだテーマ設定でプログラムを組んでいただいています。
市井)これらのセミナーを見たいときは、どうすればいいですか?
髙木)より多くの方に会場に足を運んでいただきたいので、セミナーを充実させると共に、ワンデイパス10,000円(税別/1日)もご用意しました。この1つのパスで、台場・渋谷の両会場への入場が可能です。
桑原)特に今年は間口を広げて業界の若い人たちにも海外の状況を学ぶ場になってほしいと思っています。
TIMMのセミナーは幅広い方に興味を持ってもらえるような様々なテーマをご用意しました。例えば、初日のKazUtsunomiyaさん、丸山茂雄さん、二日目の小室哲哉さんのキーノートをはじめとして、日本アーティストが海外公演に向けての準備事項を具体的にお話していただくなど、これから海外に出ていこうという若い方々向けのテーマも沢山あります。
松本)たくさんのセミナーを受けてほしいので、1日に幾つかのセミナーを見ることができるようプログラムを編成しています。
高木)今年のTIFFCOMは、APN(Asia-Pacific Producers Network)と連携します。これによりアジアのさまざまな国と地域を代表する第一線のプロデューサー50名にTIFFCOMのイベントやセミナーに参加していただけることになりました。中でも「中国映画市場を解読せよ!中国トッププロデューサーに聞く」と題したセミナーは必見です。また、関連セミナーとして企画した「早わかり!これがアジア映画マーケット最新事情」もAPNとの連携なくしては成立し得なかった貴重なセミナーです。
市井)セミナーの内容を参加できなかった人達も理解できるように、有料でもよいのですが、アクセスできる形もぜひ考えてもらいたいですね。
JCS2016 イベント・セミナー 一覧 渋谷会場
JCS2016 イベント・セミナー 一覧 台場会場
新しい取り組みで、VIPOと共同開催のセミナーを開催
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◆2020年の東京五輪に向けてさらに海外に発信を
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高木)VIPOさんに主催していただきます海外エージェントとのビジネスマッチングイベントもTIFFCOMのことしの目玉企画のひとつです。海外のセールスエージェントによるプレゼンテーションと個別のビジネスマッチングセッションの2本立てで企画しておりますのでアニメ、IP、TV番組の新規取引先を探している方々に恰好のイベントになるかと思います。TIFFCOMとして新たな価値を提供していくビジネスマッチングの機会が創出されることを期待しています。
桑原)TIMMは一般の人もご覧いただける連携ライブを開催します。一日目はアニソンなどのジャンルのアーティスト、二日目はポップス系、最終日はバンド系など一般の人も入りやすい構成になっているので、ぜひ観に来ていただきたいですね。
松本)今回のTIAFでは具体的には提案できませんが、来年は日本にアニメが生まれて100周年になります。今後、100周年事業として大きく3つのカテゴリで展開しアピールしていきますので、よろしくお願いします。
(1) 約12,000タイトルあるアニメのデータベースを生かし、アーカイブや一般向けには展示会などを開催。
(2) アニメを活用した子供向けの教育。
(3) フェスティバルや上映会などを行う、イベント「NEXT100」の開催。
髙木)2020年の東京五輪を見据えてTIFFCOMも長い目で取り組む必要があるのは分かっているんですが、正直、1年1年どう乗り越えていくかに精一杯な部分もあります。でも、本当はそういうことではなく、中長期的に考えていきたいです。
桑原)2020年に東京五輪があるので、そこが最初のゴールとして取り組みを考えていくことをもっとしていきたいですね。
- 髙木 文郎 Takagi Fumio
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公益財団法人 ユニジャパン 事務局次長
TIFFCOMディレクター
- 1983年
(株)東京ニュース通信社入社
- 1988年
(株)ザテレビジョン (現(株)KADOKAWA)入社
- 1993年
(株)角川書店 (現(株)KADOKAWA)入社
- 2008年
(株)角川メディアハウス取締役就任
- 2011年
(株)ムビチケ (現(株)エイガウォーカー)代表取締役社長就任
- 2015年
公益財団法人ユニジャパンTIFFCOMグループマネージャー就任
- 2016年
同事務局次長就任
- 桑原 誠 Makoto Kuwahara
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一般財団法人 音楽産業・文化振興財団 専務理事
TIMM主催責任者
- 松本 悟 Matsumoto Satoru
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一般社団法人日本動画協会 専務理事・事務局長
TIAF主催責任者
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