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2009.12.18
コ・フェスタグランドセレモニー2009 オリジナル3D映像 - 3D撮影現場レポートと3D市場について

ハリウッドを中心に3Dへのニーズは加速し、日本でも急激に3D映画対応上映館が増えている。全世界的に3Dは普及傾向であり、3D元年ともいわれる2009年。コ・フェスタグランドセレモニー2009においても俳優、役所広司氏を起用した3D映像をオリジナルで制作し、上映した。

オリジナル3D映像を上映するにあたっては、VFX技術分野で実績と経験をもつオムニバス・ジャパン(東京都港区)が制作を担当。撮影現場のレポートと共にオムニバス・ジャパン武田佳典常務取締役に現在の3D技術、3D技術がコンテンツ業界にもたらす影響などを伺った。

3D撮影のテスト現場

3D事業を始めた経緯

2000年に制作したイベント映像を皮切りに、博覧会・イベントなどで多くの3D作品を手がけ、VFX技術、3D分野での実績・制作経験を重ね、2005年の愛知博では、裸眼で視認可能な立体映像を制作しました。

今年、ハリウッドを中心とした3D映画の動きや、米国ラスベガスで開催された世界最大の放送機器展覧会「2009 NAB Show(NAB2009)」に参加の折は、3D関連の展示が大半を占める様子を見て、3Dはこれから大ブームになると確信しました。

そこで、今後の3Dデジタルコンテンツのニーズに応えようと、弊社が中心となり、総合映像制作プロダクションである株式会社東北新社と3D映像を使った企画を実施している株式会社ホワイトボックスの3社共同にてデモ用の映像を制作し、今年の6月に発表しました。

ダンサーと周囲を舞う羽が立体躍動感に満ちた「3D ダンス」、疾走する車が突き抜ける「3D RUN」の2作品のデモで手応えを実感しました。これにより、東北新社グループ内での企画から仕上げまでの一貫した制作体制の中で3D映像への対応性、グループのクリエイティビティーとテクノロジーの総合力による3D映像制作の可能性を実証しました。

3D映画制作

3D撮影に使用するカメラは親指カメラと言われる小型のものと、もう1つはハーフミラーリグを採用した大きなカメラです。小型タイプのカメラは人間の眼の間隔6.5cmを意識し、2台のカメラの距離を自由に合わせて撮影するためのカメラリグは、弊社独自に開発したものです。ハーフミラータイプの大型カメラもアイギャップを自由に設定できます。

博覧会・イベント等での3D分野における10年ほどの経験、ノウハウ蓄積の後、事業範囲を広げるという意味でも、3D実写映画を制作しようという方向に行きつきました。前述のカメラ2台を使用し、弊社で開発した3D技術を駆使した3D実写映画として、『牙狼<GARO>~RED REQUIEM』の撮影を行いました。これは2005年に製作した特撮テレビドラマ『牙狼』を『牙狼<GARO>~RED REQUIEM』として劇場映画化したものです。

『牙狼<GARO>~RED REQUIEM』ではVFXや弊社開発の3D技術により、迫力あるリアルなアクションシーンが最大の見どころとなっています。

3Dの撮影に関しましては、映画全体の長さが90分程でドラマ部分が8割、アクション・格闘シーンが2割ですが、飛び出しばかりではなく奥行きをだせるようにも工夫しています。また、あらゆるシーンで3Dならではの演出をしています。

3D映画の現状

アメリカをはじめ全世界的に新しい潮流となっていますが、弊社以外でも3D実写映画を制作するという動きが日本国内でも2009年に入り動きが活発化しています。日本初のデジタル3D実写長編映画10月公開の『戦慄迷宮3D』、アニメ映画では東映アニメーションの『きかんしゃ やえもん』などがありますが、まだまだこれからというのが現状です。

アメリカでは2005年にRealD社が映画館で3D映画を疲労感なく見られるシステムを作ったことにより、その後劇場での3D映画が拡がりを見せました。

3D映画はコンテンツの差別化になりますし、ハリウッドでも収益にもつながるということで、今年は『モンスターVSエイリアン』を皮切りにすでに公開された3D映画「くもりときどきミートボール」「ファイナル・デッドサーキット 3D」、今年の12月にはジェームズ・キャメロン監督「アバター」が公開され、北米での3Dの上映館は増加傾向、前述の「アバター」も含め、10本以上の海外3D作品が日本で上映されます。また、上映館については、北米でも3Dの上映館が増加傾向を辿っているのと同じように「アバター」の公開を見据え、前年に比べ飛躍的に増加しています。世界的にも3Dの上映館数は今年の末には5,000館以上になるともいわれています。

3Dの上映方式

昔は3Dというと、赤と青のセロファンのメガネを掛けて観るということもありましたが、現在では3D用のメガネも多種多様で、上映方式も異なります。従来の3D映画よりも高画質、大迫力の映像を供給・上映できる環境が整備されてきたこともあり、ハリウッドをはじめとする全世界的3Dブームの到来がきたともいえます。

日本の劇場で導入されている3Dについては大きく分けて以下の4タイプの上映方式があります。

RealD?方式

RealD社が開発。右目用と左目用のデジタル映像を専用プロジェクタを使って毎秒144フレームで交互に投影するもの。これを円偏光方式フィルターの付いたメガネで右目左目の各々視点の違う映像を観ることにより、立体映像として視聴できる。

DolbyR3D方式

RGB(赤、緑、青の3原色)を右目用と左目用に分割し、波長分光フィルタを高速で回転させ、右目用、左目用に適切な映像で表示する。波長分光フィルタメガネでこれを視聴する。

XpanD方式

右目用、左目用の1フレームごとの映像情報とアクティブシャッター内臓のメガネを同期することにより視聴する。メガネとの同期により、液晶シャッターで各々の目の視界が閉ざされ、違った映像を観ることで立体映像が視聴できる。

IMAXR3D方式

カナダのIMAX社により開発された大型映像システムで、大型の平面スクリーンに上映するタイプ、ドームスクリーンに投影するIMAX Domeや、立体映像のIMAXR3D、そしてデジタル化したIMAXRDIGITAL プロジェクション・システムなどの方式がある。

今後の3D市場

3D上映においては専用の高額なプロジェクターが必要であったり、専用のメガネを用意したりと、上映館数についてハリウッドに比べ遅れはあったものの、大手系列のシネコンがオープンするにあたり、3Dプロジェクターを備えた劇場も激増しています。

新たな収入源としての3Dのソフト、ハード面の開発・開拓、それに伴う3Dコンテンツの増加、コンテンツを供給する土壌の整備が急速に進み、2009年は3D元年といわれています。
すでにスポーツ中継、コンサート中継を3Dで観賞する、という試みがはじまっていて、リアルタイム中継も普及していくと思います。

今後の展開としては、家庭で3Dを楽しむという方向での市場があります。ブルーレイディスクは、急速に消費者に受け入れられつつあり、フォーマットが技術的に優れ容量も大きいことから、臨場感あふれる3D体験を実現するために最適です。来年には薄型テレビやブルーレイプレーヤーで再生する3D映像ソフトなどの国際規格が制定されるというのもあり環境が整備されつつあります。パナソニックさんも2010年4月には、3D映像対応の薄型テレビやブルーレイ・ディスクレコーダーなどを世界で販売するとか、ソニーさんも同時期に発売するということです。家庭では、テレビ、プレーヤー、対応ソフトと専用の3Dメガネを使用することで、映画館用に製作された3Dコンテンツの情報を、高画質で観賞できます。

世界的不況もあり、外出してお金を遣うというよりもインドアのエンターテインメントの需要も高まる方向だと思いますし、映画の3D化の波を受けてホームエンターテインメント市場も含めた巨大3Dマーケットが形成されていくのではないでしょうか。

取材 2009年9月・10月 (取材・文 広報室 小林真名実)


牙狼<GARO>~RED REQUIEM

公開:2010年
製作/制作:株式会社東北新社
技術協力:オムニバス・ジャパン

監督:雨宮慶太
アクション監督:横山誠

テレビ東京で放送された特撮ドラマ『牙狼<GARO>』の映画版。最新の映像技術を駆使した全編3Dの映画で、『牙狼<GARO>』は、全身を黄金の甲冑で包んだ黄金騎士〈ガロ〉が、人類を襲う魔獣・ホラーを相手に戦うハイパーアクション。

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