北海道文化放送株式会社

先進コンテンツ技術による地域活性化促進事業 支援事例

北海道文化放送株式会社北海道上川地方におけるVR映像、ドローン映像を活用した観光PR事業

VR映像の写真や動画以上の臨場感を体感できる特徴と、ドローンによる空中からの壮大な映像を北海道地域の観光PRに活用し、地域への来訪者増と地域経済の活性化を図る。
また、利用者に対する調査を行い、より効果的な利用法を探ることで、今後のVR映像、ドローン映像の進展に寄与する。
2017年は旭山動物園の開園50周年にあたることなどから、北海道上川地域をテスト事例として地域の観光資源をVR映像化、ドローン映像化する。
国内、海外のイベントや催事場において展開することで、旭川を中心とした地域の地域活性化、インバウンドを促進することを目的とする。

今回のコンテンツ制作について

特に気を遣っている点

VRのドローン撮影では、機体の揺れが激しいためVRカメラを装着して安定した空撮を行うことが難しい。またドローンの飛行ルートに露天風呂があることが分かり、撮影時間が営業していない時間に限られたため短時間での飛行となった。
VR映像は、没入感をより高めるために、高品質の映像制作を心掛けた。
VR編集では、撮影時間が早朝、正午など時間帯が違うため全体のトーン合わせや撮影場所それぞれの特徴に合わせてステッチングを行ったところ。
演出面では、テレビ局が制作する観光コンテンツとしての工夫をした。単にVR映像を視聴するのではなく「おもてなしエアライン」に搭乗する飛行体験を提供。ベストシーズンの上川地方の雄大な自然、景色をVRとドローン映像、パネル展示などと組み合わせ観光情報ブースをパッケージ化した。また夏場が最も美しいシーズンなので、そのタイミングを逃さないようにした。

最も苦労した点

ロケ先での撮影時間に制限があったところ。360度VR撮影は全天球写り込んでしまうため、ベストな撮影時間帯は11時〜13時となる。(太陽が高い位置)今回は、撮影場所が観光地であったため、観光のお客様に極力迷惑、影響を与えないよう、施設オープン前の早朝撮影が必要であったり、人待ちなどが発生したためベストな時間帯での撮影が難しかった。
カメラ6台で撮影し、編集でそれらの素材をつなぎ合わせて360度の映像を制作しているが、つなぎ部分が目立たないように加工するのが、通常の番組制作の編集の10倍くらい時間がかかり苦労した。

新たな技術や技法

高品質の360度カメラとドローンを組み合わせての撮影。モニターを見ながら撮影するのではなくドローンを目視しながら操縦をするため、どのような映像が撮れるのか場数を踏まないとなかなか身につかない。
高画質VR(12K、16K等)にすることで、ヘッドマウントディスプレイのみの利用ではなくプラネタリウムや映画感などのその他の施設でもコンテンツ展開が可能に。

コスト削減に効果的な独自の手法

この撮影の時点で、北海道に於いてこの映像企画を実行することができるドローンやVR制作の技術者がいなかったため機材費、輸送費がかかった。今後、地元のカメラマンにドローン技術やVR技術を広めていくことで、地元でのVR制作が可能となり地域活性化・コスト削減につながる。

ユーザーターゲット・年齢制限

ユーザーターゲットは男女問わず全てのユーザー。
年齢制限については、年齢に応じた2つのアプリケーションを制作した。ヘッドマウントディスプレイ(Gear VR)は13歳以上の方、ダンボール製の単眼ビューアーは、13歳未満の方に利用いただく。
北海道のイベントではファミリー層がメインになった。タイ・バンコクでのイベントでは旅行会社、マスコミ、ブロガーなどの来場者にアピールをした。これらのイベントでは体験者アンケートで100%の人が「楽しかった」という回答があった。試聴による酔いの症状は全くなかった。

映像酔いを防止する工夫

映像制作時に下記の工夫を行った。
(1)VR映像制作過程においてスタビライジング処理を行う。
(2)酔いやすいシチュエーション(狭くて細長い道や、山肌・崖などの近場での上下移動等)を避ける。
(3)動いているシーンのみではなく静止(定点)しているVRのシーンも組合せる。
また「酔いを感じた場合は遠くを見る、また、続けて試聴せず、すぐに申し出てください」というアナウンスコメントをVR映像コンテンツの前段部分に入れた。装着する際にも口頭で説明を行った。

没入感・リアリティ・臨場感を高めるための取り組み

空間内に紹介文や施設名などを組込むと臨場感が損なわれるため、テロップなどをあえて組込まない編集を行った。白髭の滝では「滝の音」や上野ファームでは「鳥の声」など自然界の音を組み込むことで没入感を深めた。

地域振興のための注力点

ロケ地は、あさひかわ観光誘致宣伝協議会、旭川観光協会、旭川市経済観光部等の協力を得、旭川・上川地域の夏におけるベストスポット・ベストシーズンにこだわった。次世代のVR制作の担い手となってもらえるよう、地元のカメラマンを起用し、主にドローンの撮影を担ってもらった。
VRをイベントで公開することで旭川の魅力を伝え、観光誘致につながることを意識した。
特に、単なるVR・ドローン映像を視聴するのではなく、「体験型のアトラクション」にこだわり、観光地の魅力的な景色をバックパネルに使用。また、「待ち時間」が有効な時間になるよう、モニターで6つの観光地のドローン映像をループで流すことで魅力的な北海道の映像を常時アピールした。タイで開催したイベントはあさひかわ観光誘致宣伝協議会が主催の観光PRイベント。観光セミナー、観光PR・商談会などのブース設営された会場のなかの一角をVR体験ブースとして設置し、連動しながら開催した。

実施事業者からのコメント

北海道の地域振興にとって、インバウンド対策は最重要課題。そのために、観光PR施策の精度を上げることは非常に重要と考え、インバウンドへの新たなアプローチ手法として、先進コンテンツ技術の積極活用を進めていくという部分で、今回のこの事業に参加できたことは大変良い経験になった。

制作したコンテンツはいろいろなイベント会場等で地域の詳細情報をパネル展示、サポート役としての「コンシェルジュ」を配置してゲストの問い合わせに対応するなど、さまざまな観光情報とともに「体験型アトラクション」化し、新しい切り口での観光PRを展開することができた。今後も各地域へ応用展開していくことが可能かと思う。