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インタビュー

2017.03.15


日本のゲーム・アニメ・キャラクターをインドで紹介
「India gaming show 2017」初開催 出展者に聞くインド市場の現在
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2017年2月、インド初の「India gaming show 2017」が開催されました。日本はパートナーカントリーとして参加し、ゲームやアニメ、キャラクターコンテンツを紹介。これをうけ、インドで急速に拡大しつつあるゲーム市場の現状や日本コンテンツ参入の将来性について、イベント参加事業者にVIPO事務局長・市井がインタビューしました。

(以下、敬称略)

急速に拡大するインドのゲーム市場を現地で体感

伸びるアジア市場は、スマホやPCゲームが好調


市井)本日は、「India gaming show 2017」に出展された、スクウェア・エニックス松田社長、CESA富山専務理事、JIIPAゴドガテ事務局長にお越しいただきました。
まずインドでの話を伺う前に、ゲーム業界の海外展開状況について教えてください。

富山)日本のゲーム業界で、最も大きな海外市場は北米です。北米は家庭用ゲームが普及しているため、ソフトの需要があります。一方、スマホゲームやPCゲームで近年成長が著しく注目を集めているのがアジア市場です。アジア諸国のスマートフォンの普及は目覚ましく、そこをひとつのターゲットに日本のエンターテイメントコンテンツを展開できればと考えています。既に多くの日本企業が、中国、韓国、東南アジアなどに進出していますが、今回開催されたインドはまだ掘り起こされていない市場だと思います。

 

ゲームショー初開催 背景にはインドの国策も


 

 



「India gaming show 2017」概要
開催期間: 2017年2月2日~5日(4日間)/BtoB(2月2日・3日)、BtoC(2月4日・5日)
場所:インド ニューデリー(首都)
会場:プラガディーメイダン(デリー近郊最大の展示会場)
来場人数:約10万,6000人(ビジネス、コンシューマ含む)
主催:インド工業連盟
協賛:特定非営利活動法人日印国際産業振興協会(JIIPA)、一般社団法人コンピュータエンターテイメント協会(CESA)、一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)
日本代表事務局:特定非営利活動法人日印国際産業振興協会(JIIPA)


市井)本ゲームショーの日本代表事務局をつとめ、日本とインド両国の経済交流活性化を図る日印国際産業振興協会(JIIPA)にまずお伺いします。
このたび初めてインドでゲームショーを開催することになったきっかけは、何だったのでしょうか?

 



特定非営利活動法人日印国際産業振興協会(JIIPA)とは
日本及びインドの企業・個人・法人・団体を対象に、日本とインド両国の産業界及び市場に関する情報収集・分析、技術人材情報交換、産業振興等の事業を行うことを目的として設立。
日本企業とインド企業との情報ネットワーク並びに有機的な相互扶助関係を構築することで、日本とインド両国の経済交流の活性化を図り、各種業界団体との交流や企業活動を通じて、日印両国の経済交流と相互発展に貢献している。



ゴドガテ)インドのゲームおよびアニメ市場は、現在1,130億円近く($=113円換算/2017.3.7現在)あり、年率約15%の勢いで成長しています。またご存知のとおり人口は世界第2位、しかも若年層の比率が高く潜在的な巨大市場として認識されています。この若年層はスマートフォンやタブレットPCの所有率が高く、携帯ゲームが71%のシェアを占めている状況です。増加する消費者に加えeコマースの発達もあって、生活文化にゲームそのものが根ざしつつある背景を受け、インド政府がインド工業連盟と共にゲームショーを開催することになりました。

市井)ゲームショー全体の様子はいかがでしたか?
コスプレ
ゴドガテ)イベントには、BtoBデーに3万5千人、BtoCデーに7万人以上の方が来場し大盛況でした。

会場の約半分ほどのスペースを日本パビリオンが占め、次に大きいのが韓国パビリオン、残りの3割程度にイギリス、ドイツ、アメリカをなどが集まり、全部で12ヶ国90社が出展しました。
日本は得意のコンソール(家庭用ゲーム機)向けタイトルを中心に展開し、韓国やその他の国はオンラインゲームが多かったです。またサッカーゲームやVRが特に人気を集めていました。

展示以外にも、ビジネスマッチングやカンファレンス、コンシューマ向けのゲームトーナメントやコスプレ大会、日本の声優によるライブパフォーマンスなども行われ、活況を呈していました。

 

会場図

 


富山)今回のゲームショー開催は、ゲームやアニメの制作を進めていくというインドのモディ首相の方針も関係していますか?

ゴドガテ)「メイク・イン・インディア」というモディ首相の政策の中には、メディアや工作機械や鉄道などいろいろな分野あります。その中の「デジタル・インディア」計画では、アニメーションやゲームなど新しいコンテンツをインドに広めて、明るく面白い国づくりの一環としてエンターテイメントに力を入れていきたいと掲げています。

富山)インドの国策に応えるような形で、ゲーム会社や制作会社もインドに行った形になりますね。

インドゲームショー
ゴドガテ)そうですね。「メイク・イン・インディア」、つまり”ゲームを売るだけではなくて、一緒にモノづくりをしましょう”という国としての狙いがあります。BtoBのアンケートでも、「日本のゲーム会社と共同でゲーム開発をしたい」「日本のアニメとコラボレーションしたい」といった声が聞かれました。
インド市場はまだ未知な部分が多くアクセスが困難といわれる中、本見本市をきっかけに、ビジネス展開・拡大つなげることができたのではないでしょうか。

市井)スクウェア・エニックスが今回出展を決めた理由は何だったのでしょうか?

松田)当社は以前から成長市場展開を重点戦略の1つとして掲げ、インドにも注目してきましたが、数年前にインドを訪問した時と比べるとだいぶ市場状況が変わってきたと感じています。ゲーム市場には開発と消費の2つの側面がありますが、消費市場として見るとインドは教育に対する意識が高い国で、数年前の時点では”ゲームは教育に良くないもの”という認識が強かった、という見方もありました。

しかし今回のゲームショウはコンシューマ向けであり、かつ、インド政府も後押ししていると聞いたので、インドのゲーム市場の変化を見定めたいと、視察もかねて参加しました。

 

ブースで体感した、日本発エンターテイメントの高い人気

スクエニブース

スクウェア・エニックス ブース

市井)(スクウェア・エニックスの)ブースを出展されて、実際にどんな印象を持ちましたか?

松田)今回、消費市場調査が主たる目的だったので、現地のゲームパブリッシャーやディストリビューター、メディアと話をしましたが、かなりゲームに対する意識が前向きに変わったなと感じています。インドには日本のゲームを知っているユーザーが相当数いるようですし、コミコンなどのイベントも活発に行われており、日本のエンターテインメントの人気は高いと感じましたね。
今はインターネットがあるので、情報の格差がないことを改めて実感すると同時に、家庭用ゲーム機やスマートフォンの普及がどうなっていくかなど、今後の展開に興味を持ちました。

市井)どんなコンテンツを紹介されたのですか?

松田)今回は、「NieR:Automata(ニーア オートマタ)」、「ヒットマン」、「ファイナルファンタジーXV」、「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」という4つのタイトルを出展しました。いずれも家庭用ゲーム機向けのタイトルです。言語は英語版を出展しましたが、特に問題は無かったです。想定していた以上に当社のゲームをご存知のユーザーも多かったですね。

富山)スクウェア・エニックスのブースは試遊台が多くて、たくさんの人で賑わっていましたね。

 

cesa

CESAブース

市井)CESAもブース出展されたのですよね。

富山)ブースでは大型モニターによる「東京ゲームショウ」及び「日本ゲーム大賞2016授賞式」の映像を上映するとともに、中型モニター9台で日本ゲーム大賞受賞作品のうち15タイトルの映像を上映しました。また、日本の家庭用ゲームの歴史を年代別にわかりやすく図解し、日本のゲーム文化も紹介する展示も行いました。

インドという市場で考えると、私たちが期待するのは技術力です。インドの持っている技術力に私たちがエンターテイメントコンテンツをのせて、世界的なヒットゲームを作るビジネスパートナーになれればと期待しています。

 

JIIPA

JIIPAブース

市井)JIIPAはいかがでしょうか?

ゴドガテ)JIIPAブースでは、アニメやキャラクターコンテンツを中心に紹介しました。

インドでは『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』などがアニメ放映されており、人気があります。また『キティちゃん』も認知度・好感度ともに高いです。こういった既にインドに浸透しているコンテンツに加え、今回は『鉄腕アトム』『リボンの騎士』といった手塚治虫作品を多く持っていきました。アニメやキャラクターに関してはインドのテレビ局から複数問い合わせがあり、今後商談を進めていくことになっています。

リボンの騎士
市井)インドのテレビ局は、日本コンテンツのどういったところが気に入ったのですか?

ゴドガテ)手塚作品のレトロな雰囲気に興味をもったようです。というのも、インドは中国のアニメがかなり普及しており、これらは3Dで作りこまれているのが主流です。中国のアニメは1番組20分で400ドル程度という破格かつ1つのアニメに対して10カ国くらいの言語をパッケージ販売しています。

市井)それはなかなか手ごわいですね。

ゴドガテ)インドで放映されるアニメは子供向けで、一方大人向けのアニメは、インターネットを介して広がっています。大人のアニメファンは購買力があり、フィギュアなど高値でも売れる現状があります。会場では『新世紀エヴァンゲリオン』のアニメーターである貞本義行さんのトークショーやサイン会を実施し、大変人気を集めていました。

市井)日本のアニメコンテンツは、まだまだ開拓の余地がありそうですね。

 

インド市場のポテンシャルは未知数


市井)今回「India gaming show 2017」に際して、ほとんどの出展者に「JLOP補助金」注1 をご活用いただいております。
注1:JLOP補助金・・・平成28年2月22日~12月1日までに採択された、日本コンテンツの海外展開を支援する、経済産業省の補助金事業

富山)日本のゲーム業界全体の産業振興は、クールジャパンの国策と一致しますし、「JLOP」を活用する意義を感じました。

松田)こういった政府のサポートがあると、動きやすくありがたいです。

市井)特にインドのように、まだ出展者も模索段階にあるような市場の開拓には、コスト面でのサポートが挑戦する気持ちを後押ししてくれるのではないかと思います。

松田)インドは今経済成長が目覚しく、また圧倒的に若い人が多い人口比率なので、ちょっとしたきっかけで市場が大きく成長する可能性が充分にあると思います。ただ決済手段や流通についてもきちんと考えないと、成功にはつながりません。インフラ整備のスピードも速いようなので、これからに期待したいです。

富山)スマホゲームなどはオンライン決済が主流ですよね。

ゴドガテ)インドでは近年eコマースシステムの発達が目覚しく、若い人だけでなく以前はオンライン決済を避けていた両親世代も利用するようになりました。

富山)あとは経済成長によって富裕層の底上げもおきていると思うので、そこが今後どこまで伸びるかで市場規模も変わってきますね。

ゴドガテ)インド人口13億人の中で、3億人程度が裕福層であると言われています。現時点でそこをターゲットにするだけでも日本の人口より多いということを気に留めておくとよいのではないでしょうか。

市井)インドは、アジアでありながら日本がまだ参入しきれていない未開の地ですし、市場開拓の可能性が大いにありそうですね。

 

matuda_profile

松田 洋祐
株式会社スクウェア・エニックス 代表取締役社長
  • 2001年 

    株式会社スクウェア(現:株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス)
    執行役員

  • 2003年 

    株式会社スクウェア・エニックス
    (現:株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス)
    執行役員経理財務部長

  • 2004年 

    同社取締役経理財務担当

  • 2008年 

    株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス 取締役経理財務担当

  • 2013年~

    株式会社スクウェア・エニックス 代表取締役社長 および
    株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
    代表取締役社長(現任)

tomiyama_profile

富山 竜男
一般社団法人コンピュータエンターテイメント協会(CESA) 専務理事
  • 2009年 

    一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA) 事務局長

  • 2015年 

     同 専務理事兼事務局長

  • 2016年~

     同 専務理事(現任)

godogate_profile

プラシャント・ゴドガテ
特定非営利活動法人日印国際産業振興協会(JIIPA)東京 事務局長
  • 2003年 

    インド貿易振興局(ITPO)デリー

  • 2006年 

    インド貿易振興局(ITPO)東京

  • 2011年~

    特定非営利活動法人日印国際産業振興協会(JIIPA)東京 事務局長(現任)


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