VIPO

インタビュー

2019.12.16


「デジタルハリウッド大学」の学長が語るデジタルコミュニケーションの重要性と日本の課題とは
 今、私たちの生活を支えているデジタルの分野に早くから注目し、大学まで設立した杉山知之学長は、常に先見の明を持ちデジタルコミュニケーションの大切さを教えてきました。世界に誇れるコンテンツを持つ日本の強みや問題、コンテンツ業界でこれから必要とされている知識、そして育ててきた人材が活躍するための課題など、お伺いしました。

(以下、敬称略)

 
 

21世紀に必要なデジタル人材を世界レベルで育てる

日本発、「株式会社」の学校らしさ。卒業生の「起業数」を誇る大学

CGやホームページを制作できる人材が必要になる時代を見越して
 
VIPO専務理事・事務局長 市井三衛(以下、市井)  まずは、どうして学校を作ろうと思われたのか。また学校開学後の中であった大きなトピックスを聞かせていただけますか。
 
デジタルハリウッド大学 学長 杉山 知之(以下、杉山)  最初に学校を作ったのは1994年です。社会人向けの専門スクールとして「デジタルハリウッド」を開校しました。21世紀にテクノロジーがここまでくることは予想していましたので、ネットワーク、コンピューター、AIの話になったときにそれを操れる側に多くの人がいないと困ると思いました。
 
とはいえ、勉強したことが遠い未来に役立ちますと言っても、誰も来てくれないので、デジタルでご飯が食べられるものは何かを考えたときにまずは「CG」、そしてホームページ制作だと思いました。
 
専門スクールを作ったのは1994年の10月ですが、多くの社会人が会社を辞めて入学してくれました。当時、25歳から35歳くらいの方が多かったので、彼らの子ども世代が将来、本当のデジタル社会を作っていくだろうとは、当時から彼らには言っていましたね。
 
市井  生まれた時からデジタルがある世代、いわば“デジタルネイティブ”ですね。

21世紀にむけて必要だった「大学設立」
 

杉山  今年で25周年になりますが、21世紀に入った2001年頃には大学をやりたいとは言っていました。
 
小泉政権の構造改革特区を機に、2004年に大学院を設立したのですが、大学院設立は私も計画の範囲でした。デジタルハリウッドで「基礎から学びたい」と来てくれている留学生もいて、そうなると日本語の問題もあり、4年制の大学もやってみようと思いました。
 
市井  語学力の面は日本の学生にも必要な課題ですもんね。
 
杉山  そうなんです。大学院をやってみてわかったことは、日本の社会人は語学力もなく、起業する環境にもいないということでした。起業する人が少ないので、そういうことも含めて教えていきたいと思いました。
 
デジタルで必要なものをみんなで自由に作れないと困るだろうと思い、夢だった大学院も作り、想定外だった4年制大学まで作って15年間運営をしていることは大きいです。ですから、最大の特徴は、もちろん「21世紀の社会状況を予測してこの学校を作った」ことですね。

学発ベンチャー数が圧倒的に多い大学として地位を確立
 
杉山  通常の大学だと、研究が一つのアウトプットですよね。
 
それがデジタルハリウッド大学は、株式会社立の大学らしく、学生の起業がひとつのアウトプットになっています。経済産業省が毎年発表している学発ベンチャーの数は、3年連続11位です。東大を筆頭に約780大学中の11位なんです。大学院生を含めて学生が約1,300人しかいない学校が入っていること自体が奇跡だと思っています。東大、京大がツートップ、うちより上にいる私大は早稲田と慶応だけです。
 
経産省が言うベンチャーは、会社を作るだけではありません。自分たちのオリジナルでプロダクト、サービス、コンテンツがなければベンチャーではないんですよ。
 
市井  新しいサービスを作る会社ということですね
 
杉山  請負会社を作っている人ならうちの学校にもたくさんいますが、それは数には入っていません。そういう意味では誇れる数だと思っています。
東大生が3万人中約270社、私たちは1,300人くらいで約50社起業しているので。
 

[出典元:経産省「平成30年度大学発ベンチャー調査 調査結果概要

デジタル技術の大切さと価値がもっと理解される社会へ

デジタルの基本は全大学で学べる時代になっていくべき
 
市井  これまでの25年で、やりたいことはやれたと感じていますか?
 
杉山  やれていないですね。
 
市井  どんなところが、足りていないと思いますか?
 
杉山  細かいところでたくさんあります。
 
私たちのような学校ができたら、もう少し日本全体でデジタル技術の必要性と大切さが一般的に理解されると思っていました。でも、どう振り返っても、平成の30年間は足踏み状態、私たちだけでできるとは思っていませんでしたが、もっとデジタルについての関心が高まり、どの大学でも基本的なことは全部学べるようになると思っていました。
 
市井  他の大学もデジタルハリウッド大学さんの競合になっていくかと思っていたら、そうでもなかったということですね。
 
杉山  はい。もっとみんながデジタルについてのとらえ方、教育の仕方を変えていくかと思っていました。ところが、昭和のままでいいという感じで、気が付いたらGAFA*に全部やられていて、生活からビジネスまで、彼らにインフラを頼らないと何もできなくなりました。
 
*GAFA:グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の4社のこと。頭文字を取って称される。いずれも米国を代表するIT企業であり、世界中の多くのユーザーが4社のサービスを利用している。
 
市井  他の大学の環境がそうならない理由は何だと思いますか?
 
杉山  インターネットを基盤とするデジタル技術への過小評価だと思います。
 
市井  日本全体がですか?
 
杉山  そうです。分かってなさすぎると思います。日本は中小企業が90%を占めていますが、自社のホームページを、実際にお客様を獲得するための機能として使いこなす必要性を、やっと最近になって理解しだしたといった感じです。

教育や進路指導の現場にもデジタルの重要性をもっと理解してほしい
 
杉山  高校の先生や進路指導の方も、アニメやゲーム産業を特殊なものととらえていて、デジタルハリウッドで学んだことが、一般社会に役立つとは全く思っていないんです。
 
私たちから言わせると、アニメやゲーム業界ではなくても応用範囲はむしろ広くあると思っています。お客様を楽しませる、喜ばせるということを理解しないで他に何があるんだろう?と思います。デジタルコミュニケーションの技術はどの産業でも通用します。
 
映像は特に重要なツールになっていますよね。そこを進路指導する側はまだ分かっていないんですよ。
 
市井  ということは、今後はコンテンツ業界はもちろん、他の分野でも通用するということをもっと啓蒙する必要がありますね。
 
実際、今のデジタルハリウッドの学生さんたちはコンテンツ以外の分野へ行こうとしていますか?
 
杉山  学生たちが、いきたい業界はやはりコンテンツです。
 
その分野の人材を育てることは、一つの強みです。必要とされる産業の裾野は拡がってはいますから、専門の教育機関として、我々がレベルをもっと上げて行こうと思っています。世界を見たときにデジタルハリウッドがトップレベルの教育機関であるか?と問われたらまだまだですから。

コンテンツ制作のレベルを上げていくためにしていること
 
市井  それはコンテンツ制作の分野においてですか?
 
杉山  そうですね。デジタルハリウッド株式会社としてみると、地方の企業にオーナーになっていただき、小さな学校を運営していただく「STUDIO事業」にも力を入れていて、現在全国に23校あります。(2019年11月現在)そこで学んで卒業した方々は、フリーランスや就転職をし、リモートワークなど新しい働き方を実現させている方もいます。
 
市井  それは、STUDIOを開校したいと希望する会社にインフラを提供しているのですか?
 
杉山  そうです。コンテンツは全てオンラインスクール用に開発したカリキュラムと教材で学びます。地方の大きな問題点は、先生を務められる方がいないことと、早く教材を作れないことです。それをオンラインで共有することで解消しています。
 
オンライン教材なので「これだったら家でもできるんじゃないか」と思われる方もいますが、家ではなかなか学習のモチベーションをキープできないので、最後までカリキュラムをコンプリートできないんですよ。

 
でも、同年代の仲間が頑張っていると「私も頑張ろう!」という気持ちになります。それでみなさん通ってくるのです。また、子育て中のお母さんが学びやすいように、数年前からSTUDIOにキッズスペースを設けています。今、「主婦ママクラス」がすごく人気なんですよ。
 
市井  4月に開催された卒業制作の優秀作品発表会でも、主婦ママクラスのチームが紹介されていましたね。
 
杉山  これは働き方改革にも少しは貢献していると思います。
それゆえに、もっともっとすごいクリエイターを育てていかなければならないという、使命感はあります。

時代とともに変化する学生に合わせた授業内容とは

大学への新入生は「イマドキ」の感覚とスマホ文化を持つ学生
 
市井  学生自身の意識はこの25年間で変わってきていますか?
 
杉山  社会人向け専門スクール、STUDIOへの入学のきっかけは、昔やりたかったことを勉強したい、就転職をしたいという動機にあまり変わりませんが、大学へ入学してくる学生の感覚は全く違いますね。
 
市井  どのようなところがでしょうか?
 
杉山  正直、もうわからないです(笑)。私も彼らと話すときに「君たちが見えていることは私には見えてない」とはっきりと言っています。世界観や物事のとらえ方が違いすぎて理解できないんですよ。
 
市井  いいとか悪いとかの話ではないですね。異次元の世界ですか(笑)
 
杉山  コミュニティに属しているときの感覚や社会のルール、国をどう見ているかもそうです。一番よく分からないのは彼らの倫理観。琴線に触れるのは何か。何がよくて何が嫌なのか、こっちの判断と全然違うんですよね。価値観や彼らのもつ世界観が違いすぎます。
 
市井  それは私たちが若い頃も同じように言われていたことですか?
 
杉山  そうかもしれませんが、より激しく違いを感じますね。特に正義感のようなものが全然違っていると思います。世の中の出来事に対しても、「すごい!」や「ひどい!」など、こんなところに反応するんだと、驚くことが多いです。
 
市井  よくある炎上の話と似ていますね。
 
杉山  そうですね。私たちは新聞やテレビを見ている年齢ですが、彼らはほとんど見ない。ネットのなかで全て完結していて、とにかくスマホをよく使いこなしています。大学からのお知らせや、そのほかの情報がスマホでとれないと、彼らにはそれだけでストレスになります。こちらが、「パソコンで見てくれたらいいのに」というのは彼らには通用しません。
 
あらゆるサービスが片手の中に納まる感覚はすごいですね。

クリエイターとしての引き出しを増やすための教養科目は必須
―未来にわたって創造し続ける知の源泉を身につけるために
 
市井  そういう感覚が違う学生を、これからどう育てていこうと思っていますか?目指すところを教えてください。
 
杉山  彼らは自分の好きなこと、興味のあることしか知ろうとしません。そうした偏った知識の中で、世界の見方などの感覚を作ってしまっているんですよね。ある程度、広い知見と視野を持った中から選択してくれているのならいいのですが、そうではありません。
 
なので、大学としては教養科目をきちんとやって、身に着けてもらおうとしています。人類が積み上げてきた世界の広さ、ダイバーシティがあるということを教養科目で学んでもらっています。
 
それは、クリエイターにとって必要な引出しです。
 
若い人を見ていてわかったのは、最初の作品だけは作れるんですが、2作目は作れない人がいます。
 
市井  どうしてですか?
 
杉山  引き出しが無いからです。「こういうものを作りたい!」という思いと世界観を1作目にはぶつけられるんですが、2作目になると、次は何を作ればいいの?となります。
 
学生たちは好きなものがあれば、検索してものすごい情報量を得てしまいます。教授も知らないようなところまで、独学で掘り下げてしまえるほど検索スキルがとても高い。ですから教養科目の先生方には、「基礎から教える必要はない」「この学問の一番面白いと思うことを8回にまとめてください」とお願いしています。
 
どのみち、一生かけても終わらないものが教養科目ですよね。ですから、科目の核となる8回を並べて、生徒たちが「これ、おもしろそう」とか、「よくわからないけど、8回だから受けてみようか」と出会いの機会を多くするようにしています。
 
市井  まずは興味をもってもらうことが重要なんですね。学生さんのウケはいいですか?
 
杉山  はい。特に現在進行形で研究をしている若い先生の授業は学生もすごくワクワクするみたいです。例えば、東大の先端物理学の先生の授業はとてもウケます。
 
物理学的なことってアニメやゲームのネタにもなっていますよね、『STEINS;GATE』しかり。イスラム教などもいいですね。宗教の先生はどなたも人気です。『聖☆おにいさん』はまさにそうですが『聖闘士星矢』など、宗教学的なことは、ストーリーの下地になりますしね。

海外の有名スタジオで活躍する卒業生たち
 
市井  現在、活躍している卒業生や、海外で活躍している方の事例があれば教えてください。
 
杉山  海外の有名なVFXスタジオにはだいたい1名以上の卒業生が在籍しています。
 
市井  彼らはそこで働く夢を最初から持っていたのですか?
 
杉山  持っていました。
 
「いつかはスターウォーズを作りたいです」と言っていた卒業生は今、本当に作っています。
 
入学した時から「夢かもしれないけれどハリウッドで働きたいです」と言っていた学生が実現させています。
おかげさまでILMピクサーディズニー、ニュージーランドのWETAデジタル、全てに卒業生が在籍しています。
 
帰国した際には、特別講義をやってもらっています。今、ピクサーで働いている卒業生が「今回のトイストーリーのここは僕がやりました。」なんて話は学生たちにはたまらないでしょう。

圧倒的表現の自由がある、世界に誇れる「クールジャパン」

強みを伸ばす教育でさらなる才能を引き出す
 
杉山  日本は表現において、他国と比較するといろいろな意味でタブーが少ないですよね。街にあふれる絵や看板を見て、欧米人は驚きますが、表現の制限が少ないのは日本の強みだと思います。社会的にこれは絶対ダメと決めつけているのも少ないです。
 
そういう意味では自由がある上にゲームやアニメ、マンガからありとあらゆる表現を子どもの頃から浴びるように育っています。
 
それ自体が勉強なのでアドバンテージになります。そのアドバンテージを持っているということを業界人をはじめ、はっきりと認識しておくべきです。
 
市井  そうかもしれませんね。
 
杉山  日本のマンガ力はすごいです。人気作品がアニメや実写化されるという原作力を発揮できる社会環境があると思います。
 
『聖☆おにいさん』はバカンス中のお釈迦様とイエスが立川で暮らしているマンガですが、海外ではマンガの題材にできないですよね。ちゃかしたり、揶揄した作者が殺されることもあるかもしれません。
 
そんなことは日本ではないし、非難する人も、抗議する宗教団体もいません。ましてやNHKでドラマ化されているんですから。
 
世界的に倫理的チェックが厳しくなっている中、日本の「表現の自由」への保障は大人たちがきちんと考えないといけないと思います。

日本が世界と勝負するための「日本にしかないもの」とは
 
市井  日本で活躍することの意義、おもしろさ、むずかしさの部分について教えてください。
 
杉山  ハリウッドや世界のアニメやゲームの場合、最初から世界を相手にビジネスをしているので、あえて、日本でやってみようと思ってくる方たちとは、少し違うと思います。日本は国内向けマーケットがまずメインで、そこからさらにターゲットを絞り込んでニッチな層に向けてピンポイントで作って行きますよね。その差はすごくあると思います。
 
市井  日本人はどちらを目指すべきだと思いますか?世界を意識したグローバルスタンダードのコンテンツを作るのは難しいのでしょうか?
 
杉山  私は止めたほうがいいと思います。
 
世界向けとなると、アメリカと勝負することになります。それにはかけている予算が違いすぎます。ミサイルに対して竹やりで戦うような構造です。そうであれば、日本にしか作れないものを作り、ファンを増やした方がいいと思います。
 
今、勉強している方たちも、ビジネスをしていく中で、いろいろな国で許されない表現があること、世界へ出していくときにはアレンジが必要だということはもちろん知るべきです。でも、日本だからこそできる表現、強みを失っては意味がないと思います。
 
Netflixなどを通じて、日本のコンテンツが世界にウケていますよね。すごく面白いと思います。『全裸監督』は最高でした。特に日本の映画人が頑張って制作しているなあと感じた力強い作品なので、嬉しいですよね。

学校は役割と可能性が広がる“場”としてもっと活用されるべき

地方でも都会と同レベルで学べる環境づくりにも注力
 
市井  これから挑戦してみたいことや未来について話しておきたいことはありますか?
 
杉山  これから挑戦してみたいことは、今やっている途中です。大学院や大学のレベルをもっと上げていくことが一番注力したいことです。高等教育は挑戦し甲斐がある分野です。
 
私はこれからEdTech(エドテック)のように、いろいろなことが全てネットで学習できる環境になるとは思いますが、リアルな学校システムの役割と可能性は明確に残ると信じています。
 
新しいものをみんなで作る場としての学校、人と人が触れ合い、ぶつかり合うことは大事だと思っています。
 
世界のどこでもハーバード大学の授業が無料で受けられる状況の中、人が通ってくる学校という場の価値をどう見いだすかということにずっと挑戦していきたいです。
 
市井  その一環として、さきほどのSTUDIO運営のような、地方がもっと自由に学べる環境を整えるということですね。そこでできた人同士のつながりと、どう化学反応が起きるかですよね。
 
杉山  そうですね。
 
市井  私たちもアカデミーを運営していて研修の内容にも、もちろんこだわりますが、プラス、コンテンツ業界のネットワーク作りも大事だと思っています。
 
アカデミーで出会った皆さんが一緒に新しいビジネスを生み出して、分からないことがあったときにはお互いに相談しあえる。そんな場を提供できることも、学校運営している意義でもありますよね。
 
杉山  それはオンラインスクールだけではできないことだと思います。

今後、主流となるデジタルコミュニケーションとは
 
市井  最後になりますが、VIPOに期待することはありますか?
 
杉山  今、動画が世の中の主流のコミュニケーションになっているので、そういう意味ではVIPOさんの役割はもっと大きくなっていくと思いますし、世界へつなげる、ひろげるという意味でも期待しています、
 
これまでも映画産業をはじめ、コンテンツ産業に貢献してきたと思いますが、日本の中小の産業に映像の力を利用していただくためには、まだまだ拡大できると思います。業界のベテランの方々がこれまで関わったことのなかった産業で、お役に立てると思います。
 
市井  地方自治体ですね。私たちは今、フィルムコミッションとも深く関わっていますが、映像を活用したことがないところも多いので、そういう部分も含めてサポートしていきたいと思っています。
 
杉山  本当ですね。最近やっと地方の旅館などがプロモーション映像を作るようになってきましたが、カッコイイ映像との差は大きいですね。海外から来られる方は実際に映像を見て判断していますから。
 
市井  何かを伝えるという意味でも映像は大切ですよね。デジタルが世の中に広がる大きな要素は映像だと思います。VIPOでも、国からの依頼で、VRやAIに関わる事業が広がってきているので、それをセミナーや補助金等で支援していきたいと思っています。
 
そういうところでもデジタルハリウッドさんともうまく絡んでいきたいですね。
 
杉山  今、デジタルハリウッド大学では、研究の核のようなものをつくろうとしていて、それを「バーチャルリアリティー」としています。「VR」を基軸にする方針にしているので、そういう先生方を集めています。
 
例えば一番大きな例は、藤井直敬さんに大学院の専任教授になってもらったことです。藤井先生は理化学研究所のグループ長で、もともとMITで研究をしていた脳科学者です。脳科学の研究をしているときにVRに興味を持って、今はハコスコという会社を作って理化学研究所のベンチャープログラムを利活用しています。そして、ハコスコが軌道に乗ったら、また研究をしたくなったと聞いて、すぐにうちの大学に来てもらいました。
 
市井  デジタルの世界もどんどん進化していくので教えることも広がっていきますね。
 
杉山  ご存知の通り、デジタルの世界は広く、奥も深いので、大学生には1年生のときからなるべく大学院まで進んだほうがいいと話しています。6年はないと、学びが深くなりません。僕もまだまだ頑張らないと、と思っています。
 
市井  ほかにも、専門スクールや主婦ママクラスなどいろいろありますしね。これだけやられてきていることはすごいことですし、これからもっと発展していっていただきたいと思っています。
 
本日は貴重なお話をありがとうございました。

 
 

杉山知之 Tomoyuki SUGIYAMA
デジタルハリウッド大学 学長/工学博士

  • 1954年東京都生まれ。87年よりMITメディア・ラボ客員研究員として3年間活動。90年国際メディア研究財団・主任研究員、93年 日本大学短期大学部専任講師を経て、94年10月 デジタルハリウッド設立。2004年日本初の株式会社立「デジタルハリウッド大学院」を開学。翌年、「デジタルハリウッド大学」を開学し、現在、同大学・大学院・スクールの学長を務めている。2011年9月、上海音楽学院(中国)との 合作学部「デジタルメディア芸術学院」を設立、同学院の学院長を7年間務めた。現在は、VRコンソーシアム理事、ロケーションベースVR協会監事、超教育協会評議員を務め、また福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議会長、内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会委員など多くの委員を歴任。99年度デジタルメディア協会AMDアワード・功労賞受賞。著書は『クール・ジャパン 世界が買いたがる日本』(祥伝社)、『クリエイター・スピリットとは何か?』※最新刊(ちくまプリマー新書)ほか。


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