VIPO

インタビュー

2023.03.17


内閣府に聞く―クリエイターやアーティスト、個人プレイヤーが社会の知財・無形資産をフル活用できる経済社会へ
新型コロナウイルス下での生活も3年が経過し、感染拡大を防止する行動制限がゆるやかになってきている今、コンテンツ業界もアフターコロナにおける動きが活発になってきました。
「巣ごもり」消費を経て、構造変革をしていかなくてはならない時期へときている中、今年度の「知的財産推進計画」のテーマは「クールジャパンの再起動」です。
内閣府 知的財産戦略推進事務局長 田中茂明氏にお話を伺いました。

 
 

デジタル時代のコンテンツ戦略とは

「デジタル化」と「ボーダーレス」、「Web2」から「Web3」へ。
 
VIPO専務理事・事務局長 市井三衛(以下、市井)   今年もお時間をいただきまして、ありがとうございます。大きな切り口で2つの質問をベースにお話しいただけたらと思います。デジタル時代のコンテンツ戦略はとても大きな枠組みですので、そこを中心にまずは、「知的財産推進計画2022」にあります、①「デジタル化がもたらすコンテンツの創作・流通・利用の在り方の変化」(図16参照)と、②「コンテンツ・クリエーション・エコシステムの活性化」(図17参照)について内容をご説明いただけますでしょうか。
 
 


※出典:「知的財産推進計画2022」P60より

 
 
 


※出典:「知的財産推進計画 2022」P63より

 
 
内閣府 知的財産戦略推進事務局長 田中茂明(以下、田中)  去年の秋頃から、デジタル時代のコンテンツ戦略検討タスクフォースを作って議論してきました。議論を始めたきっかけは、昨年夏の推進計画でデジタル時代のコンテンツに合わせた著作権制度改革をやっていくことを打ち出したことです。時代は半年1年の単位で加速化をしていて、まずやるべきであった起動ポイントの用語が2つあって「デジタル化」と「ボーダーレス化」です。
 
 ここ数年で配信事業者(Netflix、Amazon、Disney+など)が活発に出てきたことでボーダーレスとなる状況の中で、我々はどういう構造的な対応をする必要があるのか?著作権制度をうまく活用するためにどう対応すればよいのか?ということでした。
 
 ところが、去年の夏以降盛んに議論されるようになってきたのがWeb3という議論で、技術要素で分解すればメタバースであり、ブロックチェーンであり、NFTであるとか、こういう技術的なパラダイムが出てきました。そこでまた全く違う新しい構造的展開を迎えるわけですが、そこまで視野に置いた上で、将来のデジタルコンテンツ市場というのはどういう特性を持った変化を導き出していくのかを再整理して、政策の前提をもう一回見直ししてみようという議論を始めました。
 
 

コロナ禍の3年でコンテンツ業界がみてきたこと、感じたこと、変わったこと
 
 デジタルコンテンツマーケットが大きく拡大していますが、最大の要因はコロナです。コロナ禍の大きな行動制約下の中で、イベントはできない、製作活動はままならない、人が集まらないため、クリエイターやアーティストの方たちは結果的に作品を作れない、発表できない、提供できないという大変な苦境に置かれていました。
 
 政府も補正予算などを講じて支援はしてきましたが、その間、みなさん精神的にも相当疲弊されていたり、事業資金的にも厳しかったりしたわけです。クリエイティブ活動という日本の人たちの心を支えている産業の機能が失われると社会的に極めて深刻な話になりますので、支援は引き続き継続していく必要があると考えています。
 
 ただ、クリエイター、アーティストの方々も、この状況下に対応したビジネスモデルをしっかり開発されてきました。制約下の中でもリアルでイベント活動をされたり、デジタルで生配信やアーカイブ配信をしたりと今までとは違うビジネスモデルを創り出してきました。
巣ごもり需要も活発になりました。動画配信プラットフォームの加入者が増えて売り上げも増えましたし、それに伴い配信量も劇的に増えていることもあって、コロナがきっかけで新しい産業構造変革を生み出し始めています。これは動画配信プラットフォームだけではなくゲーム産業においても同様で、どちらの業界もこの期間、顧客数、売上、資金量の拡大を生み出しています。
 
 

アフターコロナで見えてくる世界

これからのメディアとクリエイターやアーティストのあり方とは
 
市井  コロナが収束したらどうなるとお考えでしょうか?
 
田中  現時点で既にグローバルにも日本国内でも行動制約が緩和されてきている中で、売り上げ規模や市場規模、参加者の規模の伸びは少し穏やかなものに変わってきてはいます。しかし、今後それが失速していくと思っている人はいないと思います。今後も伸び続けていくであろうという認識なので、デジタル化によってこのコンテンツ産業が成長していくということには多分変わりがないでしょう。そんな中で淘汰・選別は既にかなり激しくなってきていて、メディアの数の選別というのも多分進んでいくことにはなるとは思います。
 
 今、産業構造変革の大きなうねりが加速し始めています。オールドスタイルのメディアコンテンツ産業は、例えば、テレビは地上波放送で流します、音楽はCDで売ります、小説は書籍で売りますという1対1対応でという固定化された提供ルートでの取引構造とその環境がありました。ところが、デジタル化では全部データになるため様々なデジタル空間上での配信メディアが出てきて、ビジネスモデルも広告型もあれば、サブスクリプション型で課金型により配信するものがあるなど、市場特性により色々なメディアの形態が出てきました。
 
 配信だけではなく製作も全てデータでやりとりできるので、異なるドメインでコンテンツが融合しやすくなり、1つのIPから多様な価値・種類のIPを創出することが可能になりましたし、クリエイターやアーティスト側からすると、様々な選択肢から表現や発表方法を選択できます。また、色々な売り手を見つけていくこともできますから、これは明らかなチャンスといえると思います。
 
 

グローバル化が日本のコンテンツ産業に及ぼす影響と構造変革
 
市井  それでは、グローバル化が日本のコンテンツ産業にどのような影響を及ぼすと考えますか?
 
田中  グローバル化については、日本のコンテンツクリエーション産業全体から見てリスクなのかチャンスなのかと言うと、産業の中の上流か下流のどちらに属しているかで意味が違います。上流のコンテンツクリエーションに属しているアーティストやクリエイターからすれば、グローバルに配信できることはチャンスであり、ポジティブに受け止められることです。
 
 一方、国内の配信産業やメディアはメディア間競争にさらされる中で、構造変革的な対応をしていかないと生き残りの道を見い出せなくなってきます。ただし、構造変革にチャレンジすればチャンスにはなるわけなので、どういう変革対応をするかが最大の課題になってきていると思います。
 
 誰が配信するかより、中間層の製作事業者と制作事業者が重要で、このレイヤーで日本の産業が活躍できるかどうかが肝だろうと思います。上流産業において日本人が活躍しているということが大事です。
 
 

日本人の感性・価値観を表現していくことの大切さ。
 
 サブスクリプション事業者は豊富な資金量を持っていて、なるべく世界中の良質なクリエーション産業を自分の傘下に囲い込むべく、調達価格を上げにかかる競争を仕掛けてきています。従って、巨大プラットフォーマーかそれ以外かを問わず、このクリエーション産業に対してどれぐらいのお金を払えてコンテンツを作るための資源を獲得できるかという資源獲得競争になっているという意味では、日本の産業はかなり危機感を持たなければなりません。日本の小さいマーケットの中で多数の会社でパイを分け合うことに甘んじていると生き残れないため、再編か世界に打って出るかの二者択一ということになってきます。
 
 日本社会にとって大事なことは、やはり日本人が持っている感性、価値観、精神構造から生み出される日本独自の文化的なアウトプット、そしてそれをコンテンツで表現できるようにして発展、維持することだと思います。製作産業として、日本独自の産業が生き残っていくということは極めて大事です。
 
 また、誰がお金を払うかは重要ではなく、今、多くの日本のコンテンツクリエーション産業にNetflixやAmazonからお金が落ちてきていますが、それをチャンスとらえて、プラットフォームと共存共栄していくことが大切です。しかし、お金を落としてくれる産業がこの先ずっと日本のコンテンツクリエーション産業に価値を見いだし続けてくれるかという保証はないので、ネクストステップが重要になってきます。
 
 

日本のコンテンツ産業が強化すべきこと、課題とは

消費者、視聴者に対して何を価値として提供するか
 
市井  では、具体的に日本のコンテンツ産業はどうしたらよいと思われますか?
 
田中  本当に日本のコンテンツクリエーション産業は、韓国と比べて本質的に何が違うのかという議論は、このタスクフォースでもよく出ました。日本のコンテンツ産業を一番リードしてきたのは広告型大手メディアの力になりますが、ビジネスモデル形態でいくと実はB to Bで、広告ビジネスなので広告代理店や広告事業主の声が非常に強かったわけです。もちろん、視聴率を争うため消費者のことは意識していますが、デジタルプラットフォームにおける動画配信では直接消費者が選ぶクリック勝負になります。韓国のスタジオドラゴン社等の韓国のコンテンツクリエーションでグローバルビッグプレーヤーになった企業というのは、最初から消費者に何を価値として提供するかということを中心に、全ての製作事業をやっています。
 
 韓国の産業は、消費者最優先とオーセンティックな価値表現で消費者の心を震えさせることについては、研ぎ澄まされたビジネスマネジメントをしてきていると聞きます。我々はそれと比べて勝っているのかどうかという原点に立ち戻らないと、恐らく競争力は取り戻せないと思います。
 
 

グローバル市場を念頭においた人材育成を
 
 従来のビジネスモデルの中ではかなり重層階の複雑な取引構造がありました。コロナ禍の中、競争が激化する流れで構造変革はどんどん進んでいきますが、これが何をもたらすかというと、配給層と製作・制作、そこにクリエイターという3層の機能があるとすると、デジタル化とグローバル競争によって、取引構造は圧縮されていかざるを得ないし、産業構造や産業組織形態も変わらざるを得ないです。当然人材もそれに伴って流動化するということになりますが、それは悪いことではなく、むしろ加速させるべきことだと思っています。
 
 人材の流動化については、新しい形態のニーズに対して新しい価値を提供する人が増えてくるのはよい点です。世界で売れるものを作るということでは、いいものを作ったから売れるという保証はありません。そこはどうやって売るかという点で韓国の産業は研ぎ澄まされていると聞きます。マーケティングの人材については、アメリカでビジネス経験を積み重ねた人たちが育成されて韓国の産業に取り込まれていると聞きます。日本のコンテンツ業界がグローバル市場を念頭に置いたマーケティング人材を育成して、ビジネス体制を構築していかないと、なかなか勝機は現実化しないだろうと議論しています。
 
 

韓国における人材の流動性とワーキング制度

海外での知見とビジネスノウハウを自国で活かすこと
 
市井  我々も韓国の支援や手法については色々調べていますが、韓国での人材の流動化の流れは大きいのですか?
 
田中  少なくともアメリカで相当体験を積まれた方が多いとはよく聞きます。
 
市井  留学制度とか人材育成の支援を含めてですよね。
 
田中  タレントでもそうですよね。英語での発信能力が非常に高い方も多いです。ですから、LAでこのビジネスの世界に入ったことがあるかどうかは、かなり大きいと思います。なぜかというと、LAのビジネスモデルプラクティスはかなり合理化されていて、例えば、契約慣行一つ取ってみても全部アーティスト側も組合化されていて、組合の中で標準の契約というのができています。LAのマーケットの中にいると、契約、権利処理、制作、時間、コスト、さらには画像データまで、すべてにおいてマネジメントができていて、すでにイノベーションもされています。その中にいた方々が自分の知見を自国に流し込むわけです。日本も流動的に人材が入ってこない限り、そういったノウハウはなかなか得られません。
 
市井  VIPOでFilm Labといって国内外で活躍できるフィルムメーカーの育成を支援する事業でプロデューサーになりたい人に対するトレーニングプログラムを10月に行いました。その中で韓国の映画『ベイビー・ブローカー』に関わっている日本人の方が日本と韓国の撮影の違いなどを説明してくれたんです。
 
 その話に今、田中さんが言われたことがほとんど入っていました。きっちりワーキングアワーが決まっていて、ロードムービーなので色々な場所に行っても着いた時には先に到着したスタッフによってセットが全部完成されていてすぐに撮影できるなど、チームワークと連携がしっかりとできているそうで、人材の流動性もあって学んだことを自分たちのものとして完全に定着しているのだと思いました。
 
 また、マーケティングについては、映画の世界だと韓国はP&Aはあまりかけていないそうで、ターゲティングが決まっているため短い間でマーケティングをかけて一気にプロモーションをするのが主流で日本の方はスパンが長いという話でした。
 
 

映画やドラマのマーケティングにおける韓国との違いとは
 
田中  マーケティングについてよく耳にするのは、例えば、映画やテレビドラマのビジネスマッチングでの交渉の場で、粘り方もすごいので、成約率がまるっきり違うそうです。人脈形成にもかなりの時間をかけるとか、日本と韓国では隔絶たる差を感じると。マーケットにおいて日本はマッチング数と質においてかなり劣後しているのではないか。という声がきかれました。
 
 ですから、日本人も海外でそういうビジネスに触れてきてもらうべきなんですが、問題はその人たちはおそらく日本企業に戻っては来ないだろうと、タスクフォースの中で有識者から話が出ていました。そういった実績や経験を持つ人材には1億円でも払うというようなマネジメント感覚が必要で、日本企業の経営ガバナンスの文化の問題なのだと。今のままでは、海外のマーケットに投入するという育成の仕方は思いつくけれど、帰ってきてくれる保証がないという話の様でした。
 
市井  それを言ってしまうと、今、日本が一番給料が低いからですよね。コンテンツ業界だけの話に限らず、全ての業界において言えますよね。
 
田中  そうです。一般論として全てがそうですね。
 
市井  そこは変えていかないといけないということなんでしょう。
 
 

Web3.0時代等を見据えたコンテンツ戦略

仮想空間における新たなコンテンツ消費等への対応 政府施策のキーとは。
 
市井  では次に「仮想空間における新たなコンテンツ消費等への対応」についてですが、基盤技術とされるブロックチェーンやメタバース、NFTはまだまだ不確定な要素も大きい一方、将来の可能性も大きいと考えられる現段階での、政府施策のキーポイントについてお話いただけますか。
 
 


※出典:「知的財産推進計画 2022(概要)」P7より

 
 
田中  本年度はメタバースとかWeb3時代のコンテンツ戦略というのも掲げていますが、メタバース空間とはいったい今までと何が違うのかという議論をしてきました。
 
 その価値を一言で言うと、現実世界の物理的制約、人間個々の自分が持っている制約、性格や自分の能力の制約などからの解放ですよね。現実にはできないけれど、見たいものを作るとか、自分ができなかったことをできる人間になって活動するとか、現実空間とは違うものの同等以上の価値があるから滞在時間が長くなるとすると、かなりの経済活動がそっちに移ってくる可能性があります。
 
 そうすると、人間の滞在時間が長いということは、あらゆる時間消費のためのサービスで、物売りというかソリューション売りですが、メタバース空間でのブランド商品の提供なども含めて、多様なものが出てくるわけです。消費社会の成長スピードと新しいビジネスモデルの発展という意味においては、経済政策としても無視できない、非常に大きなマーケットだろうと考えています。従って、メタバース空間内にまた別の経済圏ができてくるということは、絵空事ではないだろうと感じています。
 
 

メタバース空間での日本の強みとは
 
市井  メタバース空間での日本の強みとはどこにあると思いますか?
 
田中  日本の強みはコンテンツという言い方をする人もいますが、もう少し絞りこむとキャラクターです。欧米と日本でメタバース空間の特性は違うようで、欧米はリアル空間の転写が多く、日本はアニメのワールドが多い。アバターもアニメのキャラクターや少女マンガのスタイルのものが多いですが、欧米は必ずしもそうではない。どちらがよいかという点はメタバースに入る人が選ぶ話ですが、やはりキャラクターに関しては日本に優位性があります。
 
 次に、メタバース空間の提供の技術や空間獲得能力では、日本に強みがあるか?というと厳しいと思います。ただ、バンダイナムコさんがガンダムのメタバースを発表しましたよね。別にガンダムというロボットだけを売っているわけではなく、ガンダムが想定している未来社会の価値観・社会観をマンガ化したものですが、そのある種の世界観価値提供しているという、そういうアニメマンガを作っている国はもともと日本しかなかったわけです。今は中国もやり始めていますけど。マーベルの世界でもありません。そういう意味ではここは日本の強みでもあるし、キャラクターについては世界中でかなり強固なファン層を獲得しています。
 
 

ファンコミュニティービジネスに日本の存在価値が。
 
 そうなってくると、卑近な言い方をしますと、キャラクターのファンコミュニティーを囲い込むビジネスという形態をとるわけです。そのファンコミュニティーに参加意欲を持たせるためにDAOみたいなものも使うのかとか。そのように、ファンコミュニティービジネスをどう発展させるために、この新しい情報技術を使うのかといった話に発展していく。そこでの色々なデジタルアセットのやりとりについて、決済を国際的に簡略するためにどうトークンを使っていくかのような話になっていくわけなので、様々な新技術を活用できるわけですが、キャラクタービジネスあるいはファンコミュニティービジネスの形成において、日本は一定の存在地位を獲得できるチャンスはまだあるかもしれないと思っています。
 
 

世界で勝機をつかむための日本政府による施策とは

メタバース空間におけるビジネスモデルを作るための議論
 
市井  メタバース空間におけるビジネスをサポートするためにどのような施策を考えられていますか?
 
田中  メタバース、NFT等と重なるWEB3.0についてはデジタル庁が束ねることになっていて、我々は知財本部ですから、コンテンツ政策として何ができるか、この空間における法的な問題はどうなっていくかには関心があって、本年度の推進計画に入れました。
 
 ただ、推進計画を策定していくプロセスで、メタバースの関係者と話す機会がありましたが、正直に言うと国のほうで先走った、極端に言えば規制、そしてハードローを作っていくということについては、非常に慎重な意見と懐疑的な意見が多かったです。
 
 それは、この技術革新に基づくビジネスは今始まったばかりで、ビジネスモデルやどういう空間価値を提供するかということも含めて、トライアンドエラーを繰り返されている途上で、イノベーションのまさに初期段階にあります。そこで、ありとあらゆる空想の世界で、こういう問題が起きるのではと規制やハードローを作られたら、その時点でいくつかの試行策は実行不能になってイノベーションを止めることになります。デジタル時代の中においてはハードローよりソフトローでやるべしという議論がベーシックにありますが、そういった典型例の声が聞こえてきて、それは多分そうだろうと思うわけです。
 
 

ハードローを制定する前にソフトロー形成への支援を
 
 民間の方々の中には、例えばバーチャル渋谷をやっている方々などで多くの新しい参加者をメタバース空間に呼び込む上で、皆が大企業のようなリーガルリテラシーがあるわけではないため、何らかのソフトロー的な指針が要るのではないかと思って作られているわけです。そういう活動はやはり支援していくべきですが官が勝手に想像してルールを作るのではなく、民間のやろうとしているソフトロー形成と我々が連携する。ですから、官民で一緒にやっていくというヨーロピアンな発想ではありますが、そういう活動にしていきたいと思っています。
 
 その活動形式を規定するのはなかなか難しいので、有識者会議のような感じになってしまいますが、昨年11月に、「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議」を立ち上げました。
 
 その中では、メタバース関係をやってらっしゃる事業者や、いくつかコンソーシアムのようなものができあがっているのでその関係者などにも入っていただいております。現実に既にメタバース事業をやっている観点から見てリアルな課題とはなんなのか。官民連携会議には弁護士やアカデミアの方々にも入っていただいており、その問題にはどういう解釈とソリューションが与えられるべきなのかということを突き合わせて、まずは課題整理からしています。必要があれば、ソフトローの整備についても民間と連携して、一緒に検討したいと思っています。
 
市井  なるほど。ぜひ、進めて頂きたいと思います。今日はお忙しい中、様々なお話をお聞かせ頂き、ありがとうございました。
 
 

 


 
 

田中茂明, Shigeaki TANAKA
知的財産戦略推進事務局長

  • 87年(昭62)慶大経卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。
    2006年通商政策局北東アジア課長、2008年商務情報政策局サービス政策課長、2010年製造産業局自動車課長、2012年内閣官房内閣参事官(日本経済再生総合事務局)、2017年官房審議官(競争力担当)、2018年経済産業省大臣官房総括審議官。
    東京都出身。


 
 


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