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松竹、アミューズから学ぶ、コンテンツのグローバル展開、成功の秘訣 (コンテンツ東京2017 特別講演より)
松竹、アミューズから学ぶ、コンテンツのグローバル展開、成功の秘訣 (コンテンツ東京2017 特別講演より)
今回は、「コンテンツ東京2017」の特別講演を対話形式に再構成してお届けします。本講演「音楽、舞台、映像などジャンルを超えたコンテンツの海外展開、成功の秘訣~アミューズ・松竹に学ぶ、グローバル戦略~」は、パネリストに松竹株式会社 細田光人氏と株式会社アミューズ 宮野治彦氏をお迎えし、VIPO専務理事・事務局長の市井三衛が、グローバル展開の最前線に立つお2人のお話をお聞きしました。
細田 光人氏(松竹株式会社 取締役副社長)[略歴]
宮野 治彦氏(株式会社アミューズ 執行役員 アジア事業部担当)[略歴]
※五十音順
(以下、敬称略)
日本コンテンツの海外展開、その最前線を知る
これまでの海外展開のあゆみ
◆ 「伝統と革新」をテーマに新しいことにチャレンジする松竹
市井 今日は、「音楽、舞台、映像などジャンルを超えたコンテンツの海外展開、成功の秘訣~アミューズ・松竹に学ぶ、グローバル戦略~」ということで、この講演にご参加いただいているみなさんの海外展開事業に少しでも役に立つ情報をご提供できたらと考えております。
まずは、松竹の細田さんから、松竹の海外展開事業についてお話しいただきましょう。
細田 みなさんは、「松竹」にどんなイメージをお持ちですか? 数年前に行った企業調査では「映画の会社」「歌舞伎の会社」「お笑いの会社」などさまざまなご意見をいただいたのですが、実は私たちは、昔から個別のコンテンツを深堀してファン層を掘り起こすことを得意にしていた会社です。一方、企業のイメージアンケートでは、「保守的」「敷居が高い」「伝統」「シニア」などと、保守的な会社というイメージが強く、社員もそのような傾向が強かったのは事実です。しかし、今や日本のマーケットは縮小傾向にあるので、国内シェアを獲っていくことは続けつつ、新しいマーケットにも目を向けて海外進出も行っています。
市井 海外進出をするにあたりポリシーのようなものはあるのですか?
細田 私たちは「伝統と革新」と呼んでいますが、伝統を継承しながら新しいものを作り、革新的な仕事をしてグローバル展開へ活かそうと思っています。
そもそも松竹は、明治28年(1895年)創業の122年の歴史を持つ会社です。大谷竹次郎と白井松次郎という双子の兄弟がはじめたので、「竹」次郎と「松」次郎で松竹になったのですが、この2人がずっと保守的なことをしてきたわけではありません。もともと松竹は歌舞伎の興行から始まっていますが、M&Aによって劇場を買収したり、90年前には映画に進出し、日本で初めてトーキー映画を製作したのも、昭和の初頭にフルカラーの映画を始めたのも松竹です。そういう意味では常に新しいものにチャレンジしてきました。
市井 昔から革新的な取り組みを続けているんですね。
細田 歌舞伎の海外公演は、1928年(昭和3年)、市川左團次の旧ソ連公演以来、NY、パリ、ロンドン、北京などで行ってきました。しかし当時はローカライズしたものではなく、コアなファンを中心に古典歌舞伎そのままを上演していました。
今年の3月には中村芝翫の襲名記念公演を北京で行いました。この公演は、ビジネス目的とアンバサダー(大使)的な役割で日本の文化を広げる目的の両面があったのですが、3年前に同じような公演を北京で行ったときは、招待客が多かったんです。しかし驚いたことに今回は、自分たちのポケットマネーでチケットを買ってくださったお客様でいっぱいになりました。
市井 世界は3年であっという間に変わっていきますね。私たちも国内外問わず、変化に対応していかなくてはなりませんね。
細田 おっしゃる通りです。今、私たちがトライを始めているのが、伝統芸能と日本のテクノロジーを組み合わせた”新しいタイプのエンターテイメント製作”で、歌舞伎が今まさにその挑戦をしています。
— 事例(松竹)
『Japan KABUKI Festival in Las Vegas 2015』噴水公演 (2015年8月)
ラスベガスのベラージオという噴水ショーで有名なホテルで市川染五郎と中村米吉が歌舞伎演目「鯉つかみ」を上演。チームラボ制作のプロジェクションマッピングをスクリーンに見立てた噴水に投影、それに演者が動きを合わせる趣向。3日、5公演で10万人を集めた。
細田 私たちには、外国人の方からリスペクトされる長い歴史や伝統に裏打ちされた日本文化やコンテンツがある一方で、アニメやロボットなど最先端の技術もあります。日本のクールな技術力と、それとはギャップのある伝統芸能を組み合わせることで、外国人の方や日本の若い方にも刺激的で魅力あるコンテンツとして映るのではないか?…と考えています。今の私たちには、「伝統芸能を大衆化」し、すそ野をもっと広げる努力をして、外国人の方はもちろん、歌舞伎や映画に親しみがない日本の特に若いお客様にも見てもらえるようなさまざま取り組みが必要です。
— 事例(松竹)
「超歌舞伎」をニコニコ超会議で公演 (2016年、2017年)
「超歌舞伎」と銘打ち、中村獅童と初音ミクの競演、プロジェクションマッピングによるアナログとデジタルを融合した歌舞伎をニコニコ超会議で上演。大きな反響を呼び、経済産業省の「第1回クールジャパン・マッチングアワード 」のグランプリを受賞。
細田 そのためにも、単独でむずかしいことは、チームラボやネイキッドなど最先端の映像技術を持った方たちと組ませていただいたり、大手企業の協賛やJLOP事業等に支援をしていただくなどして、これからもいろいろな企業とコラボレーションして、掛け算で日本のコンテンツを海外に広げていきたいと思っています。
市井 特に海外展開は他社とのコラボレーションが重要であるということですね。
◆ 世界の拠点から発信し続けるアミューズ
市井 それでは宮野さん、アミューズの海外展開の取り組みを教えていただけますか?
宮野 私たちアミューズの海外展開には2種類あります。
1)日本のコンテンツを海外拠点から発信していく戦略と、2)アーティストの活動の延長線にある海外戦略です。両者はパラレルに動いていており、連携し合えるとさらに威力を発揮していきます。
今日は、私が担当している1)の海外拠点から発信する海外戦略を中心にお話させていただこうと思います。
まず、海外戦略の基盤ともなるアミューズのポリシーをお話します。弊社は以前より海外展開に積極的で、社風としてボーダレスな考え方を推奨し、面白いことを思いついた人にすぐにGoサインをくれる風通しの良さがあります。そういう環境の中で、以前より韓国映画『シュリ』を日本に紹介したり、ブロードウェイ作品に出資して日本公演を実現させたりしてきました。
ビジネス領域の点では、現在世界の音楽業界を取り巻く環境は大きく変化しています。今後の収益モデルを考えたときに、健全な危機意識をもっていれば当然、海外は選択肢に入ってきています。国内市場だけを見て「CDが売れないからライブへ」という思考だけでは限界があると思っています。
また、人財の点では、アミューズは社員・アーティスト共に豊富な海外人財が揃っていると思います。台湾でディーン・フジオカ、韓国で大谷亮平を見つけたように、海外で活躍する日本人アーティストの発掘もしています。中国語や韓国語など、語学を勉強しようという意識は社員もアーティストもとても高いです。
市井 最近の日本人の逆輸入アーティストと言われる方々の活躍は、アミューズさんの海外戦略の賜物なんですね。具体的に拠点はどこに置いていますか?
宮野 韓国、台湾、上海、シンガポール、香港、最近はロサンゼルスとパリにも拠点を置いています。最近のアジアのエンタメ業界では、中国で大きなお金が動いています。中国を押さえていないと成長はないと考え、弊社では上海に力を入れています。例えばアニメの海外番販ではシンガポールで1話5万円のタイトルが、中国のネットチャンネルでは50万円以上の値段がつくこともあります。
各拠点では、日本のアーティストが現地でライブを開催する際にビザ申請を支援したり、制作、券売、PRを担当しています。また、現地のイベントに日本人のアーティストが1組だけブッキングされたというときに、主催者側から現地のアテンドを依頼されることもあります。
市井 日本人アーティストのニーズが確実にあるということですね。アーティスト自身の意識も変わってきていますか?
宮野 アミューズでは最近、語学を勉強するなど海外進出を意識しているアーティストが増えていると思います。弊社にはプロデューサー的役割を担うマネージメントがアーティストとしっかり話し合い、彼らの希望をどのように実現させたらよいかを考える社風があります。海外拠点は社内からの相談の受け口にもなっています。
しかしながら、アーティストが海外でやりたいからと言って、アミューズのみでやれることというのは限られています。松竹さんやVIPOさんなどの日本のパートナーや、現地で日本関連イベントを作り上げた日本カルチャー好きの方々など、多くの皆さまにチャンスを与えていただきながら、一緒に進めています。
市井 海外に拠点を置くメリットはどのようなことですか?
宮野 大きく3つあると思います。
1つめは、現地の方々との関係づくりです。拠点があることでその国のメディアや業界、政府、クライアントとの関係作りが可能です。その国にいるからこそ入ってくる情報がありますし、お声がかかることもたくさんあります。
2つめは、その国を理解した、日本コンテンツビジネスの中心人物を育てていくことです。現地の言葉で勝負する必要がありますので、日本語が堪能な日本のコンテンツファンたちに一緒に働いてもらい、私たちのノウハウを身につけてもらうことで、現地アミューズが支えられていきます。
3つめは、お客様の理解です。現地のスタッフと働くからこそ、その国のお客様をより深く理解することができます。コンサートチケットの価格の目安など、現地スタッフの意見を聞けばだいたいわかります。一人では偏るので、複数のスタッフの意見を聞ける体制をつくり、政府・業界関係者の人たちからヒアリングできるようにしています。
市井 どんなにネット環境が発達しても、現地の空気を肌で感じたり、face to faceによるコミュニケーションの効果はまだまだ大きいようですね。
課題はありますか?
宮野 日本のエンタメ会社が海外に拠点を出して、すぐに黒字化するのはとても難しい状況です。
日本コンテンツの販売拠点という機能から始まるものの、そこでのマネタイズは難しく、現地コンテンツに出資させてもらったり、フェスを共同開催するなど事業を広げる必要があります。
ですので、業種にこだわらずにビジネスを作る意識を持つことが必要になると思います。弊社は現地企業が日本へ発信するコミュニケーションのお手伝いもしています。
また、今後は現地のアーティストの育成やローカルコンテンツの共同制作などにも向かっていきたいと思っていますし、単発で終わらず毎年継続するイベントを立ち上げたり、毎年イベントを開催してくれるクライアントとの関係づくりなど、安定的な事業を育て上げることに注力していきたいと考えています。
市井 ご紹介ありがとうございます。両社とも予想以上に数多くの成功事例 があって驚きました。
◆松竹事例はこちら
◆アミューズ事例はこちら
中小企業にこそ使ってほしいJLOPの支援制度
◆ 海外展開を計画中の全ての事業者を応援
市井 さて、事例紹介の中で少し出てきましたが、松竹さんもアミューズさんも、JLOP補助金 をしっかり活用いただいていて、事務局を担当している私たちVIPOとしては嬉しい限りです。
会場でJLOP補助金 をご存知の方はどのくらいいらっしゃいますか?
……..(パラパラ挙手)1/4くらいですね。思った以上に少ないですね…。
JLOP補助金 は、日本のコンテンツを他の言語にローカライズする場合や、海外のイベントで日本のコンテンツをプロモーションする場合などの費用の一部を国が補助する制度です。
松竹さんやアミューズさんのような大手企業さんだけでなく、中小企業の方にもどんどんご利用いただきたい制度です。詳細情報は、VIPOウェブサイトにも掲載していますが、2週間に一度、説明会も実施しています。ご興味のある方はぜひご参加ください。
海外展開の成功と国別展開の比較、人材育成について
◆ 海外展開成功の秘訣は各国のニーズに応えること
市井 なぜ、海外展開が成功していると思われますか?
細田 考えられる要因は2つあります。
1つめは、現在、世界的にコンテンツ不足・ネタ枯れという状況が起きていることです。このような状況の中では「どれくらいコンテンツを提供できるか」がポイントで、約3,000タイトルのコンテンツの権利をもっている松竹としては、これらをいろいろな形で水平展開していくことがキーになると思っています。水平展開する上では、他社とのコラボレーションをどんどんしていきたいですね。
— 事例(松竹)
『家族はつらいよ』中国へリメイク権を販売・制作協力(2016年)
公開した直後に中国からリメイク権販売のオファーがあり、2017年5月に「家族はつらいよ2」の公開前のタイミングで『家族はつらいよ』リメイク版が中国で上映。リメイク権の販売だけでなく、制作にも協力をしながら付加価値をつけて、収益をあげる取り組みをしている。中国語版タイトル:『麻煩家族(マー ファン・ジャーズー)』
2つめは、ローカライズの質です。私たちが作ったさまざまなコンテンツを現地各国の「好み」や「感性」、「嗜好」に合うように現地の方と一緒に作りながら、その国で受けるものに生まれ変わらせることが重要だと思っています。
宮野 アミューズでは、海外展開がうまくいっている、と言えるかは分かりません。しかしいま細田さんがおっしゃられた、コラボレーションが大事だと思っております。
コンテンツ不足、という点でも、たしかに海外のフェスに呼ばれるアーティストが増えていますし、ホールや会場を持っている企業、コンテンツ企業の方から「新しくて面白いコンテンツが何かないか?」と声をかけていただくことが非常に多くなっています。
また、海外で日本のアーティストが成功する場合、メタルやロック、エモなど、もともとそのジャンルいるファン層に受け入れられることが多いと感じていますが、弊社のパフォーマー集団「白A」など、見たことのないコンテンツを探している人たちにバチっ!とはまるということも増えてきています。
市井 なるほど…面白いですね。このようなニーズまで把握できるのは、現地拠点ならではの強みですね。
◆ 国別での違いを理解してマーケットを展開していく
市井 国別で展開方法に違いなどがあれば教えてください。
宮野 音楽業界で言うと、それぞれの国には、なぜか大ヒットした日本の曲があるのですが…、例えばインドネシアでは五輪真弓さんの『心の友』という曲を国民全員が日本語で歌えると言われています。ミャンマーでは長渕剛さんの『乾杯』です。それぞれの国にそういう日本の歌があるのはとても嬉しいことですが、そういう、日本の音楽との接点と歴史を国ごとに理解することは大切だと考えています。
一方、中華系の人はバラード好き、マレー系の人はハードロック好きだというような、そもそもの音楽ジャンルにおける嗜好もあります。アミューズのアーティストでは、例えば「ONE OK ROCK」は台湾のライブではスローなバラードで大合唱、インドネシアではハードな曲で縦乗り大合唱など、国によって一番喜ばれる曲が違うということは感じますね。
市井 私もインドネシアの『心の友』の話は聞いていましたが、ミャンマーで『乾杯』が人気なのは知りませんでした。
松竹さんはいかがでしょうか?
細田 全体としてはマーケットが広がっているところを掴むことと、それぞれの地域のニーズの違いを感じながら進めることだと思っています。
映画は中国とインド、これからベトナムあたりが伸びてくると言われています。映画の製作と興行の両方でマーケットとして捉えています。
また、欧米やシンガポールなど民度が高い地域ではライブパフォーマンスのニーズが高いと思っています。ネットでは味わえないその場でしか味わうことのできないコンテンツをどのように提供していくかが課題だと思っています。
市井 日本でも会場の問題はありますが、フェスをはじめとしたライブの需要は伸びていますからね。
細田 今後は、映画製作や歌舞伎などの水平展開だけでなく、グッズの販売やイベント展開も行っていこうと思っています。また、国ごとの感性という点で、宮野さんがおっしゃった通り、現地の嗜好性や”具体的な”ニーズを引き出す必要があると思っています。
例えば日本の動物映画は、最後は泣かせようとして作りますが、中国では「泣き」は必要なくて、すっきりした作品が好まれます。インド映画リメイク版『Love in Tokyo』のキャスティングでは、インド人男性に人気のある日本女性のタイプは「歌って踊れる人」、彼らにとって日本人女性は顔の表情が乏しいと感じるらしく、表情豊かで肉感的な子が良いと言われます。
市井 なるほど、あたり前ではありますが、国それぞれの好みやニーズに対して敏感になることが必要ですね。
— 事例(松竹)
日印合作映画『Love in Tokyo』リメイク
1966年にインドで大ヒットした映画『Love in Tokyo」のリメイク権を買い、2020に向けてインドとの合作映画として蘇らせる企画。当時、日本でほぼ全編ロケを実施し、挿入歌の「Sayonara Sayonara」も大ヒットした。インド人の9割10億人が知っていると言われる映画。
◆ 海外展開に必要な組織や人材育成そして、グローバル人材に期待すること
市井 海外展開を増やしていくには、人材育成が重要になると思いますが、どのようにお考えですか?
細田 これまでも海外に展開するチームは各部にあったのですが、各部のニーズに不要なものは捨てていました。しかし、もう少し俯瞰して横断的に利用していく部署が必要だと感じ、6年前にグローバル戦略開発室というものを立ち上げました。今はメンバー6名です。ここを中心に多面的に、歌舞伎だけでなく映画やグッズの販売を始めています。
グローバル人材採用としては、昨年は、新卒でフランス人を採用しました。これまでも中国人や韓国人の方など多様な人材を採用しています。即戦力になるだけでなく、いろいろな化学反応を起こしてくれることを期待して対応を進めています。
市井 新卒のグローバル人材がどのような化学変化を起こしていくのか、今後の展開をぜひお聞きしたいですね。
細田 人材育成という点では人を育てる研修が大切だと思っています。松竹の中だけではなく、メーカーや情報通信など違う業種の数社と組んで研修をしています。VIPOさんのアカデミー や業界セミナー なども利用しています。
人を育てる一方で、自前主義にこだわる必要はないと思っています。その国の文化や嗜好をよく知っているのは現地の方なので、出資した国の現地の日本好きの方と会話をしながらものづくりに生かしていければと思います。「自社の人材も育て、他社の能力も生かす」、その両面でやっていきたいと思っています。
宮野 私はグローバル人財の育成を「海外拠点で現地人を採用して育てる」という方針で進めています。しかしもちろん本社でも、新入社員に外国人や語学堪能な日本人を採用してグローバル人財を育成しています。近年ではアーティストの海外ツアーなどが多くなり、そのニーズ合わせて人財を採用しています。
海外拠点のスタッフのほとんどは、メールや電話での日本語対応が可能ですし、きちんと大学で勉強した日本語なので、日本人よりも日本語が丁寧なこともあります。
市井 今後はどのようなスキルを持った人材が必要だと思いますか?
宮野 私は3つの能力を持っている人が理想的だと思っています。
1つめはグローバル・リテラシーがあること。ある国の言葉やそれぞれの国のことを”きちんと”知っているということです。何ヶ国かの市場やビジネスのやり方の「肝」を”きちんと”知ると、初めての国への対応力も高まると思います。
2つめはビジネス・リテラシーで、お金を作れるかどうかです。マネタイズができない状態の海外進出は続かないので大切なスキルだと思っています。
3つめはコンテンツ・リテラシーで、日本のコンテンツのことをよく知っていることです。また、日本のコンテンツ業界はクローズな部分も有ると思うので、実績や信頼がないと、どんなに海外で人脈があってもチャンスをもらうことは難しいと思います。
この3つの機能が個人に備わっているのが理想ですが、これがチームに備わっていればいいと思っています。
市井 グローバル・リテラシー、ビジネス・リテラシー、コンテンツ・リテラシー、確かにこれがあれば最強ですね。
手前味噌になりますが、私たちVIPOは市場開拓と人材育成の2つを事業の柱としていて、人材育成事業では、階層別や各専門領域(リーガル、ファイナンス、グローバル化等)が学べるいろいろなコースを実施しています。
この2年で74社284名の方が受講され、さまざまなスキルやナレッジを身につけるだけでなく、コンテンツ業界のジャンルを超えたネットワークの構築にも役立てていただいています。細田さん、宮野さん、お2人とも他社とのコラボレーションの重要性を言われていましたように、若いうちからいろいろなジャンルの人たちと友だちになっていくことが、結果的にビジネスに繋がっていくと考えていますので、ぜひご活用いただければと思います。
細田さん、宮野さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
【事例集】
◆ 事例1(松竹)
『Japan KABUKI Festival in Las Vegas 2015』噴水公演 (2015年8月)
ラスベガスのベラージオという噴水ショーで有名なホテルで市川染五郎と中村米吉が歌舞伎演目「鯉つかみ」を上演。チームラボ制作のプロジェクションマッピングをスクリーンに見立てた噴水に投影、それに演者が動きを合わせる趣向。3日、5公演で10万人を集めた。
◆ 事例2(松竹)
『Japan KABUKI Festival in Las Vegas 2016』劇場公演 (2016年5月)
MGM Grandホテルで市川染五郎、中村歌六らによる『KABUKI LION 獅子王』を公演。全7回の公演はほぼ満席となり大盛況に終わった。英語のセリフや解説、衣装の早変わりなどによって、コアなファンだけでなく新しいアメリカ人のファンを増やした。
◆ 事例3(松竹)
「超歌舞伎」をニコニコ超会議で公演 (2016年、2017年)
「超歌舞伎」と銘打ち、中村獅童と初音ミクの競演、プロジェクションマッピングによるアナログとデジタルを融合した歌舞伎をニコニコ超会議で上演。大きな反響を呼び、経済産業省の「第1回クールジャパン・マッチングアワード 」のグランプリを受賞。
◆ 事例4(松竹)
『家族はつらいよ』中国へリメイク権を販売・制作協力(2016年)
公開した直後に中国からリメイク権販売のオファーがあり、2017年5月に「家族はつらいよ2」の公開前のタイミングで『家族はつらいよ』リメイク版が中国で上映。リメイク権の販売だけでなく、制作にも協力をしながら付加価値をつけて、収益をあげる取り組みをしている。中国語版タイトル:『麻煩家族(マー ファン・ジャーズー)』
◆ 事例5(松竹)
日印合作映画『Love in Tokyo』リメイク
1966年にインドで大ヒットした映画『Love in Tokyo」をリメイク権を買い、2020に向けてインドとの合作映画として蘇らせる企画。当時、日本でほぼ全編ロケを実施し、挿入歌の「Sayonara Sayonara」も大ヒットした。インド人の9割10億人が知っていると言われる映画。
◆ 事例6(松竹)
中国ファンタジー小説『竜族』のプロモーションビデオ制作(2017年予定)
映画以外の動画制作やネット配信ビジネスにも進出。
◆ 事例7(松竹)
上海でイベント『松竹お化け屋本舗』を開催(2017年)
日本で人気のあったお化け屋敷を中国でも展開。上海では、繁華街ではない場所だったにも関わらず、オープンから20日間で約4,000名が来場。他にもいろいろな場所で展開予定。
◆ 事例8(アミューズ)
日中共同制作ドラマ『真夜中タクシー1・2』企画・製作(2014、2015年)
中国の動画配信サイト「YOUKU/TUDOU」とアミューズが共同で制作。人情ものドラマ制作をやりたいという中国の監督をサポートし、アミューズ上海が企画・制作を支援。
◆ 事例9(アミューズ)
上海イベント『BiliBili Macro Link2016 – Star Phase』の演出・制作(2016年7月)
日本コンテンツを多く流している中国ネット配信サイト「BiliBili動画」が毎年開催するイベントの演出・制作を担当。
◆ 事例10(アミューズ)
台湾で『進撃の巨人展』を開催(2015年12月)
展示会が大きな市場となっている台湾で海外初の「進撃の巨人展」を製作委員会と開催。台湾では休日に展示会に行く人が大変多く、展示会場が多く集まるエリアはデートスポットになっている。
◆ 事例11(アミューズ)
インドネシア映画『ヘッド・ショット』への出資と配役(2017年3月)
スターウォーズにも出演した世界的なアクション俳優イコ・ウワイス主演のインドネシア映画『ヘッド・ショット』に出資。新日本プロレスの後藤洋央紀選手のブッキングも。
◆ 事例12(アミューズ)
ホテル「マリーナベイ・サンズ」日本向けブランディング企画(2017年4月)
シンガポールの有名ホテル「マリーナベイ・サンズ」の日本での認知向上を目指した企画を実施。女性誌『STORY』で、「シンガポール・華麗なる休日」特集を企画し、アミューズのアーティスト大谷亮平とアミューズ所属で『STORY』のカバーモデルをしている稲沢朋子をブッキング。
JLOP事業(J-LOP4)について
本補助金は、経済産業省の平成28年度補正予算による「コンテンツグローバル需要創出基盤整備事業費補助金」を活用し、コンテンツ等の海外展開に必要なローカライズやプロモーションを行う事業者に対して、補助金を交付することにより、コンテンツ等の海外展開を促進し、「日本ブーム創出」にともなう「関連産業の海外展開の拡大」につなげることを目的としています。
細田 光人 Mitsuhito HOSODA
松竹株式会社 取締役副社長
1980年
株式会社富士銀行 入行
2005年
株式会社みずほ銀行 ビジネスソリューション部長
2007年
松竹株式会社 顧問
2007年
同社 取締役 管理本部総務部門、システム室、 内部統制PT担当 総務部長委嘱
2008年
同社 同 経営情報企画部門担当
2009年
同社 常務取締役 管理本部長 人事部門、 経営情報企画部門、システム室担当
2012年
同社 専務取締役 管理本部長 人事部門、 経営情報企画部門、総務部門、システム室部門担当
2013年
同社 専務取締役 管理本部長 人事部門、 経営情報企画部門、システム室担当
2015年
同社 取締役副社長 管理本部長 人事部門、 経営企画部門、システム室、グローバル戦略開発室、 オリンピック・パラリンピックIR事業推進PT、地域振興PT担当
2016年
同社 取締役副社長 管理本部長 経営企画部門、 人事部門、システム室、オリンピック・パラリンピック・ IR事業推進PT、地域振興PT担当
宮野 治彦 Hruhiko MIYANO
株式会社アミューズ 執行役員 アジア事業部担当
幼少の頃よりバンコク、ジャカルタ、ニューヨークに在住。1995年株式会社電通入社。韓国、中国、ブラジル、南アフリカへの長期出張を経て、2003年より電通シンガポールに駐在。Anime Festival Asia、J-Live Asia, CharaExpoなど、日本のコンテンツをアジアに紹介するイベントを多くプロデュース。アジアの日本ファンを可視化し、日本のエンターテインメント業界の海外進出をマーケティングで支える活動を続けてきた。
2013年4月に独立しCROONERを設立。大型イベントや日本人アーティストのライブの受け皿になる一方、日系クライアントや地方自治体のマーケティング、ブランディングを受け持つ。
2015年9月、CROONERがAMUSE ENTERTAINMENT SINGAPOREの傘下に入り、同社とCROONERの社長を兼任。アミューズ本社のアジア担当執行役員として韓国、中国、台湾、香港の市場も見ている。シンガポール在住。
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