北米最大のキッズエンターテイメント産業見本市「Kidscreen Summit」~参加者が結果につなげるための秘訣を知る~(VIPOマッチングセミナーより再構成)
- 毎年2月にマイアミで開催される北米最大のキッズエンターテイメント産業見本市「Kidscreen Summit」。今回のセミナーでは、主催者によるプレゼンテーションと参加事業者を交えてのパネルディスカッションを実施。マーケットの動向や日本企業の課題、実りある結果を得るための押えるべきポイントや事前準備などについてお伺いました。前・後半に分けて再構成してお届けします。
- ジョエル・ピント氏 (Brunico Communications Ltd. “Kidscreen Summi”イベントセールスマネージャー)[略歴]
- マイルス・ホブス氏 (Brunico Communications Ltd. “Kidscreen Summit”アソシエイトパブリッシャー)[略歴]
- 中村 豪志氏 (株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツ 海外事業本部)[略歴]
- 笹木 理加氏 (株式会社ディーライツ コンテンツビジネス本部 コンテンツ部 部長)[略歴]
- 槙田 寿文 (映像産業振興機構[VIPO]事務局次長)
(以下、敬称略)
主催者プレゼンテーション――世界への扉が開く「Kidscreen Summit」
- ◆あなたが今参加すべきイベント「Kidscreen Summit」とは
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毎年2月に米国フロリダ州マイアミで、アニメーションだけに限らず、TV番組、ゲーム、おもちゃなど、キッズ向けのコンテンツの見本市として開催される北米最大のイベント。TV局や配信プラットフォームのディストリビューターやライセンサー、アニメーション会社のプロデューサーやクリエイターはもちろん、おもちゃメ ーカーなども多く参加します。
また、北米の大手製作スタジオや配信大手も毎年参加し、彼らのセッションに参加できるだけでなく、キーマンと知り合うチャンスも多く、共同製作の商談も活発に行われます。欧米各国だけでなく、韓国をはじめとして、アジアからも毎年多くの企業が出展・参加。
プレゼンテーション資料
「Kidscreen Summit: The Must-Attend event of 2019」(
ダウンロード:PDF(3MB))
「Kidscreen Summit」公式サイト(英語)
- ◆参加企業・参加者の概要
- 「Kidscreen Summit」には、世界各国の企業の役員をはじめとして、バイヤー約400人、プロデューサー900人。北米だけでなく、ヨーロッパ、アジア、南米、アフリカなど50ヶ国以上から約2,000人以上が参加します。
SVODの会社は15〜20人の買付の役員を毎年送ってきています。社歴が5年以下であるHuluをのぞいて、ここに載っているすべての会社が5年以上参加しています。
私たちは、全業界、すべてのチャネルをカバーできるように、世界各国のスピーカーを招聘するように調整しています。
「Kidscreen Summit」では、「会うべき人」に会うことができます。さまざまなセッション、ランチミーティング、コーヒーブレイクなどを通して、放送局、プロデューサー、コンテンツオーナー、買付担当の役員、ディストリビューター、リテイラー、ライセンシー、ライセンサー、SVOD企業など、さまざまな立場の業界関係者の方と出会うチャンスがあり、いろいろな作品や新たな分野の共同製作、共同開発のチャンスもあるのです。
またこれらの交流はすべてホテル内で完結します。朝食とランチは含まれているので、ホテルの外に出る必要がなく、自分の時間を効率的に有効に活かすことができます。また、基本的に参加企業はブースを設けないためブースにいる必要がなく、どんどん動いてネットワーキングすることがとても大切です。
- ◆イベント・セッションの内容
- イベント編成とコンテンツのチームは、業界のトレンド、課題などをすべてのセッションで網羅できるようにしています。編成チームは、フランスの「Cartoon Forum」や「MIPCOM」にも参加し、北米だけではなく世界を見ています。業界で今、何が起きているのか、どういった問題があり、どう解決しているのかを、皆さんは直接見て聞くことができるのです。
私たちはグローバルな事業展開をサポートするためにさまざまなセッションをご用意しています。
「Speed Pitching」
このセッションでは申し込んだ相手(バイヤー)に向けて、直接8分間かけてピッチをすることができます。放送局がどのような作品を探しているのか聞くこともできます。8分間はけっこう長いものですよ。
「30minutes with…」
放送局がどのような作品を求めているのか、どのようにピッチをすればいいのか、どれくらいの予算なのか、などさまざまな情報を聞くことができます。それによって、自分たちの作品が適切なのか、どこに売ればいいのかを知ることができます。30分のセッションの後、担当者とより詳しく話をすることもできます。録音は禁止で狭いクローズドな環境で行うので、放送局の本音が聞けるセッションです。
「Lunching with…」
放送局だけでなく、出版社、コンシューマープロダクトの会社、ライセンスを持つ会社、ショービズの会社など、業界のさまざまな方とランチミーティングができます。
「Cocktail with…」
放送局と20ほどの参加団体が、お酒を飲みながら話ができるセッションです。毎日、いろいろな規模のカクテルパーティがあり、1日の終わりにリラックスした環境で気軽に参加できます。また、全参加者が参加できるKidscreen Awardなど、他にもさまざまなイベントが開催されています。
「Master Classes & Mentor Classes」
もっと具体的に話をしたい、情報を入手したい参加者のための有料セッションです。業界経験者と若手向けのプログラムがあり、業界の中でも重要な位置付けで、その時にふさわしいトピックを意図的に選んで開催しています。
朝から夜までいろいろなセッションが行われていますから、目的に応じて、自分のニーズに合ったセッションを選んでカスタマイズする必要があります。カスタマイズすることは国際見本市でもとても重要なことですが、「Kidscreen Summit」はそれが最大限できるように企画されています。
- ◆各国の参加状況
- スペイン、マレーシア、コスタリカ、メキシコ、ブラジルは国としてブースを設けています。小さなグループとしてスタートしたのですが、それ以来毎年ブースを設けています。国の団体は、政府や民間企業からの支援を受けていたり、自己資金など、いろいろです。
KOCCA(韓国コンテンツ振興院)は大きな団体のひとつで、長年参加しています。
イギリスは、昨年だけで95,000,000ドル相当の取引の実績があったようです。イギリスは具体的な金額を政府へ提出する必要があるので、我々の資料にも記載しています。
国によってビジネスの成熟度、成功の測定基準も異なりますが、すべての国が「Kidscreen Summit」は効果的と考えていると思います。キッズエンターテインメントに限定されている点で、アヌシーのMIFAやMIPCOMとは一線を画しています。2019年には、イタリア、アルゼンチン、コロンビアが初参加します。
「Kidscreen Summit」は常に進化を続けており、15年前とはかなり変化しています。会場をマイアミに移してからは、参加者が35%も増えました。
- ◆情報発信・参加登録者の特典
- 私たちはkidscreen公式サイトからはもちろんのこと、ニュースースレターでもさまざまな情報を発信しています。
Kidscreen Dailyは業界の重要なニュースを、Kidscreen talent poolでは、その放送局にピッチするためには誰に連絡すればいいのか、誰が異動したかなどの人事情報を隔月で配信しています。どちらもKidscreen公式サイトから、無料で登録することができます。
また、参加登録者の特典には、参加者全員の情報をリアルタイムで入手できること、公式サイトのKidscreenXchange
プラットフォームに参加できることなどがあります。KidscreenXchangeでは、自分のプロフィールや作品情報の掲載、メッセージの交換もできるので、コネクション作りにとても有効です。
「Kidscreen Summit」の4日間のイベントだけでなく、365日動いているビジネスをフォローしていくということが、Kidscreen Communityに参加する意義だと思います。ぜひ、日本の皆さんも「Kidscreen Summit」に参加して、さまざまな国・人とのネットワーク、ビジネスを広げてください。
パネルディスカッション――北米最大のマーケットでチャンスをつかむには「Kidscreen Summit」
- ◆業界のオールスターが集結 事前準備がキー
- VIPO事務局次長 槙田 寿文(以下、槙田) ここからは、過去に参加された事業者の方々をお迎えし、双方の視点からお話をお伺いします。
来年はVIPOも「Kidscreen Summit」に出展することになりましたので、今日は出展者の立場としてもいろいろお聞きしたいと思います。
まず参加事業者から、参加した目的や印象をお聞かせください。
株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツ 中村 豪志(以下、中村) 我々は完成したアニメーションを販売するため、子供向けアニメをピッチして、バイヤーに営業することを目的に参加しました。事前に運営事務局が用意したインタラクティブサイトを通じて担当者へ連絡し、当日ミーティングを行いました。「Kidscreen Summit」は、「MIPCOM」や「ATF」と比較すると、会場全体がひとつにまとまっていてずっとスピーディーでセッションも豊富、人も多く活気がある、という印象を受けました。
槙田 笹木さんはいかがですか?
株式会社ディーライツ 笹木 理加(以下、笹木) 当社では共同製作やオリジナルの企画を開発しそれをプロデュースするといった、映像になる前段階の開発業務を担っています。
「Kidscreen Summit」はクローズドな環境の中で業界のオールスターが揃っていて、さまざまなセッションが受けられる、楽しいパーティー会場のようなところだと感じました。ただアポを取りたいと思う人は人気が集中していることも多く、なかなか難しかったです。
中村 そうですね。番組購入の責任者や取締役などになると、スケジュールが埋まっていて約束がもらえないケースもあります。その場合は、スピードセッションやランチミーティング、さらにはセッションのスピーチ後に会って、そこで積極的にビジネスリレーションを築くことが重要だと思います。
Kidscreen Summit イベントセールスマネージャー ジョエル・ピント(以下、ジョエル) 思い通りにアポが取れないこともあるので、参加企業は事前に参加目的を明確にし、それに基づいて優先順位のリストを作って臨むことをおすすめします。
Kidscreen Summit アソシエイトパブリッシャー マイルス・ホブス(以下、マイルス) 本当にさまざまなコンテンツに溢れているので、現実的かつなるべく綿密に、はっきり会いたい人を決めて直接アプローチできるように計画することが大切ですね。
- ◆完成作品から共同製作まで全てをカバー
- 槙田 アニメーションという世界において、我々は勝手に、日本、フランス、アメリカの3つ地域が中心であるという風に思っているのですが、その日本が北米における最大のマーケットにあまり行ってない……。
私どもは参加された何人かの方にインタビューをさせていただいたのですが、「『Kidscreen Summit』は共同製作の話が中心で、完成作品のカタログを売るような場所ではあまりない」という意見が多かったように思います。中村さんは実際に行かれてみていかがでしたか?
中村 バイヤーは多いです。特にカナダ、USA、それと各社のプラットフォームのアクイジション担当者は多く参加していますので、営業には最大の機会だと思います。
槙田 つまり、「MIPCOM」や「ATF」に参加するのと変わらないということでしょうか?
中村 その通りです。
槙田 それでは私がインタビューした方々のイメージとは違う部分もあるということですね。「Kidscreen Summit」としては意図的にカタログの販売から共同製作まで全てカバーしようしているのでしょうか?
マイルス 確かになるべく幅広く網羅をしようとは思っていますが、キッズというくくりには変わりありません。
槙田 その「キッズ」といったときに年齢の上限はどれくらいでしょうか?
マイルス 「キッズ」といった場合、具体的に数値を決めるのは難しいです。例えば、兄弟で同じ作品を見ていた場合、その作品は年上か年下の子のどちらを対象としていたのかによっても数字が変わってきます。
20代男性向けのコンテンツが実は13歳の男の子にも視聴されているでしょうし、12歳の女の子向けの作品が25歳の女性によって閲覧されているということもあるでしょう。ですから人口動態という側面では具体的には計れないと思います。ですから幅広い年代をカバーする部分も含めて、いろいろなコンテンツを扱っています。
中村 日本のアニメとなると、海外のアクイジションやバイヤーは大人向けと捉える印象もあると思います。ですから完パケのアニメを大人向けに売りたいのであれば、潜在的なチャンスはあると思います。ただしそういうバイヤーにしっかりアプローチしていくことが重要かと。マイルスさんやジョエルさんに、「こういう大人向けのアニメを売りたいんだけど、どういうところにアプローチしたらいいか?」と事前に聞くことが必要だと思います。
槙田 適切なバイヤーやアクイジション担当者の方を「Kidscreen Summit」でご紹介いただけるのですね?
マイルス はい。ぜひご連絡ください。
- ◆共同製作における課題
- 槙田 お二人は日本のキッズ用アニメ、プログラムをどのように見ていますか?
ジョエル まず日本は、多くの分野においてトレンドセッターであると思います。ファッションもそうですし、『ドラゴンボールZ』や『ポケットモンスター』など、アニメでも世界的に成功している作品が多数ありますね。日本はグローバルリーダーになれるタレントやスキルが揃っているので、キッズのフィールドでも今後大いに期待できると考えています。
マイルス 一昔前はアジアのストーリーは他の国に伝わらないだろうと思われていました。しかし今、Netflixの影響もあってアジアのアニメが世界中に広まっています。ポピュラーなTVプログラムなどにおいて、日本が世界に与える影響は今後も大きくなっていくと思います。日本的な作品を求めている企業もいると思います。
槙田 日本のストーリーやアニメ自体の可能性については、ポジティブに捉えてもよいということですね。しかし一方で、日本のアニメ業界はなかなか海外との共同製作に踏み込めていない、という話を聞きます。問題点や課題はどこにあるのでしょうか?
笹木 当社ディーライツはプロデュース会社のため、社内に現場がありません。従って企画を形にするときは、スタジオやクリエイターさんにお願いしています。その際グローバルで求められているものをお伝えしようとするのですが、これは感覚的な部分もあってなかなか伝わりにくく、難しさを感じています。やはりクリエイティブに携わる方自身が海外に出て、マーケットを自分の目で見ることが最も良いのではないでしょうか?(下線VIPO) 世界で勝負しているという自覚も芽生えて、彼らの自信にも繋がると思います。
槙田 海外とやり取りするプロセスや制作体制に関しての課題はありますか? 海外ではソフトウェアも共通のものを使わないとやっていけないという話を最近よく聞きますが……。
笹木 時差もあるため1日、2日すぐにロスして時間がかかりますし、根気強くやっていく必要があると思います。1つの開発に2〜3年かかるケースもあります。。
制作のパイプラインの部分は、国際分業の世界ではある部分は日本、ある部分はインド、ある部分は韓国という風に細かく分けられることが一般的です。共通のソフトウェアを使いこなし、英語でコミュニケーション取れなければこの分業体制に参加するのが難しいので、日本の現場は慣れてないことが多く、ごく一部の経験ある会社ばかりに仕事が集中しているのが現状です。
槙田 今、笹木さんがおっしゃったようなことが、日本企業が「Kidscreen Summit」に行かない理由の1つではないのかと思うのですが、ジョエルさん、マイルスさんはどう思われますか?
マイルス 確かに、我々の業界はオペレーションが標準化されていないという課題があります。だからこそ「Kidscreen Summit」の場で、潜在的パートナーと早い段階から「共通のソフトウェアを使う」といったシステムの摺り合わせができていると良いと思います。
開発に2〜3年ということですが、なるべく開発期間を短縮しようとする動きがありますので、ソフトウェアを含めて、いろいろな手段を使って開発をスピードアップした方がいいと思います。まさにそういうことも「Kidscreen Summit」の場で話題にしていただきたいですね。
ジョエル 潜在的なパートナーとどのようなシナジーを見出せるのか、そういうことについて競合他社も含めて、まずは議論をしてみることが大事だと思います。議論を始めなければ前に進めません。
- ◆韓国の成功
- 槙田 KOCCA(韓国コンテンツ振興院)の方が「Kidscreen Summit」に10年ぐらいずっと参加していて、成功していると聞いています。具体的にどのような変遷を経てきて、現在、韓国のアニメ会社は実際にどのような活動をアメリカでやっているのか、教えていただけますでしょうか?
マイルス 韓国のビジネスモデルは長い間、下請け作業を主としたサービスワーク中心のビジネスモデルでした。優れた機材のプロデューサーもいたのでスキルは元々ありました。
あるときからKOCCA(韓国コンテンツ振興院)が業界に多額の投資をし、下請けから得た経験を活かしてスキルを磨いてきた結果、下請け作業を韓国に頼みに行く時代から、優れたコンテンツを韓国に買いに行く時代へと変わってきました。
一言で韓国の15年間の歴史を語ってしまいましたが、韓国企業の方々のために申し上げますと、国際舞台に出て勝負をするために多大なる努力があったと思います。海外のプロセスに適用しようと懸命に努力した結果、優れたコンテンツを制作し、クリエーションをし、売り込むという洗練されたモデルを築くことができたのだと思います。その際ずっとKOCCA(韓国コンテンツ振興院)の支援がありました。
槙田 アメリカでは韓国作品は人気があるのでしょうか?
マイルス はい。先日もNetflixが韓国の作品を獲得したという記事をリリースしたところです。今やNetflixの話題は避けて通れないほど中心的な存在になっています。またNetflixに限らず、韓国のコンテンツは国際的によく見られています。
ここ数年間、企業が提携をして、韓国作品がアメリカとカナダで放送されたこともあります。他国籍な事業展開ではないかもしれませんが、国際的な需要は広がってきていると思います。この間KOCCAが積極的にこのビジネスモデル、業界に資金を提供してきました。たしかに15年かかっていますし、韓国はまだサービスワークもしていますが、独自で優れたコンテンツも制作するというところに至っています。
槙田 「Kidscreen Summit」には韓国からどのくらい参加しているのですか?
マイルス 昨年は約23社から45名ほど参加しました。
槙田 アジア圏では他に中国も気になります。
ジョエル 中国企業も毎年「Kidscreen Summit」に参加しています。数年前には「Kidscreenチャイナ」というイベントを中国の青島で行いました。今後、業界内で存在感を増していくと考えています。
- ◆キッズマーケットを盛り上げる、新規プラットフォーム
- 槙田 では次に、キッズ向けプログラムのマーケットの方向性についてお聞きします。最近ディズニーがNetflixに対抗し、独自の動画配信サービスを始めると発表しました。こういった動きをどのようにお考えでしょうか。
マイルス まずキッズプログラムの市場は、人口でいうと北米が3億4000万人、カナダが3600万人。数多くの人たちが楽しむ、大きな市場といえます。
ジョエル さらに今、この業界はとてもエキサイティングな時期にあります。Appleの参入はかなり大きな影響を与えると思われますし、前出のディズニーもNetflixに対抗する姿勢をみせています。他のプラットフォームも今後どんどん出てくるでしょう。YouTube Kidsが数年前の「Kidscreen Summit」で立ち上がり、それ以降積極的にプレゼーションに関わっているように、他もこの流れに追随するのではないでしょうか。
槙田 そういったマーケット動向を受け、中村さん、笹木さん、今後の戦略についてお聞かせください。
中村 どのプラットフォームが主流になるのかは読めませんから、常に広く人脈やネットワークを構築しておくことが大切だと思います。また今は、新規のアニメを制作する際は、日本の会社が制作するアニメであっても言語は英語です。日本語で作ってしまうと海外の放送局が現地言語にローカライズする際に大きな負担がかかってしまうからです。マーケットに合わせた自然の流れですね。
笹木 大きなマーケットを狙う当社にとって、北米は最も重要なエリアのひとつです。「Kidscreen Summit」は北米の会社に多く出会えるチャンスですし、最新マーケット動向を肌で感じとることもできるので、とても良い機会だと思っています。
- ◆「Kidscreen Summit」参加に向けてのアドバイス
- 槙田 「Kidscreen Summit」開催まであと5ヶ月ほどです。どのような準備をして臨んだらよいでしょうか?ジョエルさん、マイルスさん、アドバイスをお願いします。
ジョエル まずはぜひ、我々にご連絡ください。さまざまなトレンドを踏まえた上で、皆さんがイベントで成功するために必要なツールをお教えします。実際に参加企業の7~8割の方は事前に我々と連絡を取っています。
またイベントでは、できる限り情報をキャッチアップしてください。スピードの速い業界ですし、築いたコネクションはすぐに実らなくても、いつか必ず役に立つときがくると思います。
マイルス 誰に会いたいのか、イベントから何を得たいのか、目的をはっきり決めておくとスムーズです。競争の激しいマーケットですが、成功できるチャンスは充分にあります。みなさんの方から積極的に働きかけて成功への道筋を築いていただきたいです。
槙田 参加されたお二人からも、アドバイスをお願いします。
中村 5ヶ月前は、まず目的を明確にし、どの会社にアプローチすべきかを設定する時期かと思います。ブッキングは年末~年明けからでも問題ありません。なおアポイントを取る上で、メールは明確・的確・端的にすることがポイントです。
槙田 事前準備が成否を決める、と心して挑まないといけませんね。当日のアドバイスもあればお願いします。
中村 「Kidscreen Summit」は、クローズドな展示会場かつ人がとても多く、MIPCOMやATFに比べてミーティングの場を設けることが難しいです。よって複数人で行く場合は、ミーティング場所を確保する人、アポイントメントの相手を探す人など役割を決めて、手分けをしたほうが効率的だと思います。
相手に印象を残すことも大事です。私はミーティング後に一緒に写真撮影し、後日お礼のメールに添付するといった工夫をしています。
また会場内のWi-Fiは通信速度が遅いので、アニメをピッチする場合などは自分のパソコンやiPadにデータ入れておいた方が安心です。テーブルが狭いので、プレゼンはフラットに置けるiPadのほうが便利かもしれません。
笹木 30分というスロット中で企画を説明するには、伝える力と英語力が必要になってきますし、目で見て理解できる資料を用意することをおすすめします。
槙田 おふたりとも非常に実践的なアドバイスですね。面識のない相手とアポをとる上で、自身のビジネスにとって必要な人物は誰なのか、どのように調査されているのでしょうか? 判断材料となるプロファイルのような資料は提供されるのでしょうか?
中村 個人的には、メディアの方からアドバイスを受けたり、LinkedInといったソーシャルメディアを使っています。もちろん「Kidscreen Summit」運営事務局が立ち上げているイントラサイトにリストが載っているので、これも有効活用するようにしています。
槙田 北米の市場は、おそらく世界最大のマーケットだと思いますが、そこがほとんど手付かずに残っているのは日本の事業者にとって今大きなチャンスだと思います。本日の話を参考に、世界への第一歩として「Kidscreen Summit」に参加する日本企業が増えるとよいですね。
冒頭で申し上げた通り、VIPOは来年の「Kidscreen Summit」に出展することになりました。2019年2月11日から14日、マイアミで開催されます。ブースの規模など詳細はこれから詰めていきますが、ご興味のある方は、ぜひご連絡ください。
- ジョエル・ピント Joel PINTO
- Kidscreen Summit イベントセールスマネージャー(Brunico Communications Ltd.)
Brunico Communications Ltd.のイベントセールスマネージャーであり、Kidscreen Summit、Asian Animation Summit、Realscreen Summitなどを含む年間22の業界イベントにおける、営業活動の責任者。主な業務は国内外の業界団体、メーカー、代理店、放送局、製作会社、ディストリビューターやメディアプラットフォームと良好な関係を構築することにより、Brunico主催イベントへの集客を図ることである。戦略を実践へと結びつける高い能力と、ビジネスにおける優れた洞察力を持ったリーダーであり、戦略のプロフェッショナルとして、企業成長の基盤を築いている。
- マイルス・ホブス Myles HOBBS
- Kidscreen Summit アソシエイトパブリッシャー(Brunico Communications Ltd.)
Kidscreenのアソシエイトパブリッシャーであり、Kidscreen Magazine、Kidscreen Summit、Asian Animation Summit、Kidscreen Daily、Kidscreen.comといったKidscreenブランドのすべてのプラットフォームにおける営業活動を行う事業開発チームのリーダー。業界のさまざまな立場のクライアントに向け、ブランドやプロパティの宣伝活動およびマーケティングを行っており、マーケティングROI(投資利益率)の向上におけるエキスパートである。また、国際政府機関と連携し、そのプレゼンス向上や、新人・若手プロデューサーの育成に尽力している。
- 中村 豪志 Takeshi NAKAMURA
- 株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツ 海外事業本部
2013年同社入社。国内ライセンス営業を経て2014年よりプロデューサーとして同社が取り扱う海外版権のマーケティング/プロモーションを担当。2017年より同本部所属。ソニー・クリエイティブプロダクツが所有するアニメおよび版権を全世界向けに販売~ライセンス営業に尽力。同アニメの海外向けマーケティング・プロモーションも担当。
- 笹木 理加 Rika SASAKI
- 株式会社ディーライツ コンテンツビジネス本部 コンテンツ部 部長
2005年ディーライツ入社。プロデューサーとして主にキッズ向けアニメーション、キャラクターのプロデュース等に携わる。2015年より自社のオリジナルコンテンツの企画開発、海外との共同製作プロジェクトに従事。
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